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国内外で人気高まるジャパニーズウイスキー

2021.4.5 掲載
国産ウイスキー「ジャパニーズウイスキー」の人気が高まっています。国内だけでなくウイスキーの本場の海外での評価も上がっており、各地に「地ウイスキー」を造る新しい蒸留所も生まれています。人気の上昇に生産が追いつかない状況で、品薄解消には時間がかかりそうです。今回はジャパニーズウイスキーの現状について解説します。

3.中小酒造会社などが相次ぎ生産に参入

3.中小酒造会社などが相次ぎ生産に参入
 国産ウイスキーの国内需要や輸出の拡大で原酒不足が深刻になっています。ブーム以前はウイスキー市場が縮小傾向だったため、需要低迷の見通しを基に原酒を生産していました。原酒は熟成に時間がかかるので、需要の急増に応えられなくなってしまったのです。この状況に対応し、ニッカウヰスキーは熟成年数をうたう年代物の販売を中止し、サントリーホールディングスも年代物の販売を一部だけにしたうえ、出荷量を限定しています。熟成年数を表記しない「ノンエイジ」の販売にも踏み切っています。
 需要拡大に供給が追いつかないウイスキー市場を狙って、中小の酒造会社の生産への参入も相次いでいます。2008年に操業を始めた「イチローズモルト」で知られるベンチャーウイスキー(埼玉県秩父市)が先駆けとなり、地域の強みを生かした蒸留所が各地で開業しています。焼酎製造の金龍(山形県酒田市)が18年に蒸留所を新設し21年にも製品を発売するほか、木内酒造(茨城県那珂市)は19年から県内産の原料を使って生産を始めました。鹿児島県では焼酎メーカーが続々と進出しており、本坊酒造(鹿児島市)が16年に生産を再開して20年から出荷を開始し、小正醸造(日置市)と西酒造(同)も製造を進めています。酒造会社以外でも食品卸の堅展実業(東京・千代田)が16年に北海道厚岸町に開設した蒸留所で製造したウイスキーを20年に発売しました。国税庁の「酒類等製造免許の新規取得者名等一覧」によると、14年には1件だけだったウイスキー製造の新規免許取得は20年には17件に増加。ウイスキー文化研究所の調査では、稼働する蒸留所は15年1月時点の8カ所から21年1月には4倍以上の34カ所に増えています。
 日本はスコットランド、アイルランド、米国、カナダとともに世界5大ウイスキーの産地のひとつですが、これまでジャパニーズウイスキーの定義が日本の酒税法になく、海外から輸入した原酒を国内で瓶詰めした製品でも「ジャパニーズウイスキー」として流通していました。日本洋酒酒造組合はこのほど、国産ウイスキーの定義を決め21年4月から運用を始めました。ジャパニーズウイスキーの主な要件として、①原材料は麦芽を必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること②国内の蒸留所で蒸留すること③原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること④日本国内で瓶詰めすること――の4つを定めています。組合の自主基準ですが、国内で洋酒製造の免許がある82社が順守する予定です。ジャパニーズウイスキーのブランド価値をさらに高めるきっかけになりそうです。
2021年4月5日掲載