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相続制度、高齢化に対応し約40年ぶりに変更

2021.3.15 掲載
相続に関する民法の規定が約40年ぶりに大きく変わり、2020年までに施行されました。相続に絡む争いごとの予防・解決や手続きの合理化・簡素化などが狙いです。相続の仕組みはどのようなもので、法改正によって何が変わったのでしょうか。今回は相続について解説します。

3.高齢化を背景に配偶者の保護を拡充

3.高齢化を背景に配偶者の保護を拡充
 2018 年に約40年ぶりに民法の相続規定が改正され、19年から段階的に施行されました。改正のポイントは相続手続きの合理化・簡素化と、相続に絡んだ争いごとの予防・解決の2つです。相続手続きの合理化・簡素化では、すべてを自分で書く「自筆証書遺言」の財産目録をパソコンなどで作成することが認められ、法務局が書式を確認のうえ保管することもできるようになりました。相続に絡んだ争いごとの予防・解決では、遺留分に満たない分を現金で受け取れるようになり、遺留分を巡る争いを短期で解決しやすくなりました。
 故人の配偶者を保護する「配偶者居住権」「特別寄与料」も新設されました。配偶者居住権は故人の配偶者が住んでいた持ち家を相続しなかった場合でも、原則として生きている限りそこに住み続けられる権利です。特別寄与料は法定相続人ではない故人の子どもの妻などが故人の介護や家業の手伝いなどをしていた場合、介護費用などにあたる金額を相続人に請求できるものです。
 故人の預貯金も引き出しやすくなりました。それまでは銀行が死亡を知ると、原則として法定相続人による遺産分割協議が終わるまで口座が凍結され、相続人は残された預貯金を使えませんでした。法改正で1行につき預貯金残高の法定相続分の3分の1を最大150万円まで引き出せ、葬儀費用などに充てられるようになりました。
 制度改正の背景には、高齢化による相続を取り巻く環境の変化があります。1989年には被相続人のうち80歳以上は約4割でしたが、現在は約7割に増加。相続人の高齢化も進行し、相続手続きの簡素化が求められるようになりました。残された配偶者も高齢化し、経済的な自立が難しくなっています。妻と子ども1人なら妻の法定相続分は2分の1で、遺産の大半を自宅が占める場合、妻が自宅を売却せざるをえないこともあります。配偶者居住権はこうしたケースを避けるために設けられました。
2021年3月15日掲載