ビジュアル・ニュース解説

温暖化ガス排出の50年ゼロへ電動車への切り替え加速

2021.2.1 掲載
自動車を電気自動車(EV)など「脱ガソリン車」に切り替える動きが世界で加速しています。政府は温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げており、その実現のために策定したグリーン成長戦略では国内の新車販売のすべてを30年代半ばまでに電動車にする計画です。今回は脱ガソリン車に向けた世界の動向や実現への課題などについて解説します。

3.軽自動車やトラックへの普及も課題

3.軽自動車やトラックへの普及も課題
 日本は08年7月の「低炭素社会づくり行動計画」で、20年までに新車販売の半分をHV、EV、PHV、燃料電池車(FCV)、クリーンディーゼル車、圧縮天然ガス(CNG)車の次世代型自動車にすることを目指していました。しかし、目標どおり進んでおらず普及は遅れています。日本自動車販売協会連合会によると、20年の普通車の国内新車販売台数に占めるHV、PHV、EV、FCVの割合は38%で、ガソリン車とディーゼル車を合わせたエンジン車はまだ60%以上を占めています。政府の目標が達成できなかった理由としては電動車の価格が高いことが挙げられます。EVは蓄電池に費用がかかり、価格は一般的にガソリン車より100万円ほど高くなっています。充電スタンドや水素供給拠点のインフラが充実していないことも一因です。充電スタンドは高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、大規模商業施設、道の駅、コンビニエンスストアなどに整備されていますが、21年1月時点でその数は全国で約2万2000にとどまっています。
 20年の電動車の新車販売のうち9割以上はHVです。HVはガソリンエンジンを併用するため、政府が目標とする50年の温暖化ガス排出量の実質ゼロを達成するにはEVの普及拡大が欠かせません。その実現には小型で高性能な蓄電池の量産が必要です。政府はグリーン成長戦略で、現在1キロワット時あたり1万円台半ばから2万円程度の蓄電池の価格を同1万円以下に下げることを目標に掲げ、メーカーの投資を支援して量産体制の確立を目指しています。
 また、国内の新車市場の約5割を占める軽自動車やトラックの電動化も課題です。軽自動車は約7割がガソリン車で電動車はHVだけです。EVに必要なモーターやバッテリーは価格が高く、EVにすると割安さが失われるため普及が進んでいません。35年までの電動化にトラックが含まれるかは未定ですが、軽自動車は含まれます。トラックは大半がディーゼル車です。EVにすると蓄電池を積む分、積載できる荷物が減るうえ、充電に時間がかかります。小型トラックは三菱ふそうトラック・バスがEVを、いすゞ自動車や日野自動車はHVをそれぞれ販売していますが、価格が高いことが普及のネックになっています。
2021年2月1日掲載