脱ガソリン車の実現に向けて先行しているのが欧州です。欧州連合(EU)は21年に乗用車の新車が出す走行1キロメートルあたりのCO₂を平均95グラム以下に抑えることを義務付けます。この規制はガソリン車の燃費に換算すると1リットル当たり24キロメートルですが、30年には同40キロメートル相当にまで目標を高めます。
ガソリン車の販売も禁止します。ノルウェーは25年までに新車のすべてをEVなどCO₂を出さない「ゼロエミッション車(ZEV)」に転換。英国やオランダは30年までに、フランスは40年までにそれぞれ脱ガソリン車の達成を目指します。英国はHVもCO₂排出ゼロを達成したものを除き35年までに販売を禁止します。欧州では既に新車販売に占めるEV・プラグインハイブリッド車(PHV)のシェアが上昇しており、ノルウェーでは20年に7割を上回り、ドイツでも20年11月に2割を超えました。
米国ではカリフォルニア州が州内のガソリン車販売を35年までに禁止する方針のほか、ニューヨークなど10以上の州が州内でメーカーに一定比率の電動車販売を義務付ける「ZEV規制」を導入しています。中国も35年をめどにすべての新車販売をEVやHVなどの環境対応車にする方向で検討しています。EVなど新エネルギー車とHVが新車販売台数に占める比率をそれぞれ50%にする方針です。
世界でガソリン車への規制が強まっていることをうけ、自動車各社は対応を急いでいます。トヨタ自動車は20年代前半にEVを世界に10車種以上投入する計画で、日産自動車も23年度までに世界で8車種以上を展開します。独フォルクスワーゲン(VW)は25年に世界販売の約2割をEVにする方針です。米ゼネラル・モーターズ(GM)は25年末までに世界にEV30車種を投入し、全車種を電動車両に切り替えます。
EV市場を狙っているのは既存の自動車会社だけではありません。EV専業の米テスラが台頭し、ソニーはEV試作車を製造。ハイテク企業の中国の百度(バイドゥ)がEV製造販売への進出を発表し、米アップルも参入観測が強まるなど、EV市場の裾野も広がっています。