ビジュアル・ニュース解説

温暖化ガス排出の50年ゼロへ電動車への切り替え加速

2021.2.1 掲載
自動車を電気自動車(EV)など「脱ガソリン車」に切り替える動きが世界で加速しています。政府は温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げており、その実現のために策定したグリーン成長戦略では国内の新車販売のすべてを30年代半ばまでに電動車にする計画です。今回は脱ガソリン車に向けた世界の動向や実現への課題などについて解説します。

2.欧州、電動化の実現に向けて先行

2.欧州、電動化の実現に向けて先行
 脱ガソリン車の実現に向けて先行しているのが欧州です。欧州連合(EU)は21年に乗用車の新車が出す走行1キロメートルあたりのCO₂を平均95グラム以下に抑えることを義務付けます。この規制はガソリン車の燃費に換算すると1リットル当たり24キロメートルですが、30年には同40キロメートル相当にまで目標を高めます。
 ガソリン車の販売も禁止します。ノルウェーは25年までに新車のすべてをEVなどCO₂を出さない「ゼロエミッション車(ZEV)」に転換。英国やオランダは30年までに、フランスは40年までにそれぞれ脱ガソリン車の達成を目指します。英国はHVもCO₂排出ゼロを達成したものを除き35年までに販売を禁止します。欧州では既に新車販売に占めるEV・プラグインハイブリッド車(PHV)のシェアが上昇しており、ノルウェーでは20年に7割を上回り、ドイツでも20年11月に2割を超えました。
 米国ではカリフォルニア州が州内のガソリン車販売を35年までに禁止する方針のほか、ニューヨークなど10以上の州が州内でメーカーに一定比率の電動車販売を義務付ける「ZEV規制」を導入しています。中国も35年をめどにすべての新車販売をEVやHVなどの環境対応車にする方向で検討しています。EVなど新エネルギー車とHVが新車販売台数に占める比率をそれぞれ50%にする方針です。
 世界でガソリン車への規制が強まっていることをうけ、自動車各社は対応を急いでいます。トヨタ自動車は20年代前半にEVを世界に10車種以上投入する計画で、日産自動車も23年度までに世界で8車種以上を展開します。独フォルクスワーゲン(VW)は25年に世界販売の約2割をEVにする方針です。米ゼネラル・モーターズ(GM)は25年末までに世界にEV30車種を投入し、全車種を電動車両に切り替えます。
 EV市場を狙っているのは既存の自動車会社だけではありません。EV専業の米テスラが台頭し、ソニーはEV試作車を製造。ハイテク企業の中国の百度(バイドゥ)がEV製造販売への進出を発表し、米アップルも参入観測が強まるなど、EV市場の裾野も広がっています。
2021年2月1日掲載