ビジュアル・ニュース解説

デジタル通貨、世界の中央銀行が発行へ準備

2021.1.18 掲載
世界でデジタル通貨発行の機運が高まっています。米フェイスブックの発行構想をきっかけに、各国の中央銀行が発行の準備を開始。中国は2022年の発行を目指し、大規模な実証実験で先行しています。今回はデジタル通貨の概要や発行に向けた動きなどについて解説します。

3.日銀、21年度に実証実験を行い体制整備

3.日銀、21年度に実証実験を行い体制整備
 主要国では中国が22年の北京冬季五輪までの発行に向けて「デジタル人民元」の準備で先行しています。デジタル人民元の利用者はスマホの専用アプリを財布代わりに、スーパーのレジなどにQRコードをかざして支払いをする仕組みです。広東省深圳市や五輪会場など5カ所を実験地域に選定。深圳では20年10月に市民約4万7600人に1人あたり200元(約3100円)を配り、計876万4000元の買い物決済をする大規模実験をしました。中国は実験をさらに北京市内や天津市、上海市、広州市、重慶市などの主要都市を含む28地域に広げる予定です。
 中国がデジタル人民元の発行を急ぐのは資金取引の管理を強化し、海外との取引を捕捉することで、急激な資金流出を防ぎやすくするためです。新興国との貿易決済などに利用を広げて人民元の国際化を進め、国際貿易や金融取引で米ドルに大きく依存する状況から脱却する狙いもあります。
 先行する中国をにらみ、日銀、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)など日米欧の7中銀は20年10月、CBDCを発行する場合の基本原則を示す報告書をまとめました。基本原則として挙げたのは各中銀が政策目標とする物価や金融システムの安定を損なわないこと、現金や他のタイプの通貨との共存、決済の技術革新や効率の向上です。日銀はこれを踏まえて21年度にCBDCの実証実験をします。まずシステム上に実験環境をつくり、CBDCの発行や流通など基本機能を検証。続いて金利を付けたり、保有できる金額に上限を設けたりするなど周辺機能を試し、最後に民間の事業者や消費者が参加する実験をします。日銀は「CBDCの発行計画はない」としながらも、デジタル化の進展に対応できる体制を整えます。
 CBDCは現金と比べ、いつ、何に使われたかを把握しやすく、脱税や犯罪に絡む取引の防止につながる半面、個人情報の保護が課題となります。また、その利便性や安全性の高さから、銀行預金からCBDCに資金が移る可能性があります。大量の資金が預金から流出すれば、銀行が成長資金を供給する原資が細る恐れもあるため、保有額や取引額に上限を設けるなどの対策が求められます。
2021年1月18日掲載