ビジュアル・ニュース解説

次世代技術で自動車に大変革、MaaSでより移動しやすく

2020.12.7 掲載
自動車業界が100年に1度の大変革に直面しています。自動運転など「CASE」と呼ばれる次世代技術が自動車を変え、様々な移動手段を円滑に利用できる「MaaS」が実用化に近づいています。今回はモビリティー(移動体)革命で何が進んでおり、移動がどのように変わっていくのかを解説します。

2.複数の交通手段などを1つのサービスのように利用できるMaaS

2.複数の交通手段などを1つのサービスのように利用できるMaaS
 そうした自動車利用の変化をさらに進めたのが移動手段のサービス化「MaaS(マース)」です。MaaSは「モビリティー・アズ・ア・サービス」の英語の頭文字をとった造語です。マースは複数の交通手段やサービスを組み合わせ、1つのサービスのように簡単に利用できるようにします。
 コンピューターのソフトウエアはクラウド経由で提供する「SaaS」(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の利用が広がっています。従来はソフトを購入しコンピューターやサーバーにインストールしていたのを、クラウド上のソフトをネット経由で利用するものです。常に最新バージョンのソフトを利用できるため、多額の費用をかけて情報システムを構築したり更新したりする必要がありません。
 個人が保有する自動車をリース会社などに貸し出し、車の利用の対価を受け取るカーシェアリングのサービスを使えば、自動車もSaaSと同様、必要な時だけ利用できます。常に自動車を使わないなら自動車を保有しなくて済むので、自動車税がかからず、駐車場を借りる費用もありません。自転車を所定の場所で借りられ、使い終わったら決められた場所に返却するシェアサイクルのサービスもあり、都市でのちょっとした移動に利用できます。
 これらのサービスの利点は好きな時に好きな場所で移動手段を選んで利用できることです。多くの場合、経済的な負担も抑えられます。マースで自動車や自転車のシェアサービスの利用予約、タクシーの配車、鉄道のチケット購入などを1つのアプリに統合し、利用料の決済まで済ませられれば、より円滑な移動ができるようになります。
 鉄道会社は既にマースの実証実験を始めています。JR東日本は東京急行電鉄と組んで2019年4月から、静岡・伊豆で実験を始めたのに続き、新潟市内や群馬県内、宮城県内で実施。東京都内でも20年1月からタクシーやシェアリング自転車の検索や決済ができるサービスを始めました。東京海上日動火災保険と提携し、マース向けに事故車両の代車としてレンタカーの代わりに電車やバス、シェアサイクルを組みあわせて利用できる保険やサービスの開発も進めています。小田急電鉄も飲食の定額制サービスと経路検索を組み合わせたマースを実験しました。
 自動車業界ではトヨタ自動車がソフトバンクと共同出資して設立した「モネ・テクノロジーズ」で多くの自治体と連携し、自動運転や配車サービスを組み合わせたオンデマンド型バスや移動型診療所などの実証実験を進めています。トヨタは西日本鉄道などと組み、福岡市と北九州市で鉄道やバス、タクシー、レンタカー、カーシェアリング、タクシーなどを網羅して最適な交通手段とルートの検索や利用予約、決済を1つのアプリでできるサービスも提供しています。国内のマース市場は30年に6兆3600億円に達し、20年の見通しの約30倍まで拡大するとの試算もあります。
2020年12月7日掲載