ビジュアル・ニュース解説

新型コロナで死亡・重症者、日本はなぜ少ない?

2020.11.16 掲載
新型コロナウイルスが世界でなお猛威を振るっています。感染の拡大終息のめどは立っていませんが、このウイルスに関する研究が進み、特徴が徐々に明らかになっています。日本人の死亡者や重症者が欧米と比べて少ないこともそのひとつです。今回はその要因について解説します。

1.他人と距離を保つ習慣やきれい好きな国民性が寄与か

1.他人と距離を保つ習慣やきれい好きな国民性が寄与か
 世界の新型コロナウイルスの感染者数は2020年11月10日現在、約5091万人、死者数は約126万人に上ります。主な国で人口100万人当たりの死者数が多いのはベルギー1139人、スペイン841人、ブラジル763人、米国737人などとなっています。日本の人口100万人当たりの感染者数は856人、死者数は14人で、いずれも少なさが目立ちます。
 京都大学の山中伸弥教授は日本をはじめとするアジアやオセアニア諸国に死亡者数が少ない要因があるのではないかとみて、その要因を「ファクターX」と呼んでいます。ファクターXの候補として生活習慣の違いや医療体制の充実、パンデミック(世界的大流行)初期対応の成功、遺伝的要因、BCG接種の経験、ウイルス感染による免疫獲得などを挙げています。
 新形コロナウイルスはせき、くしゃみ、発声をするときに鼻や口から出る飛沫を吸い込んだり、ウイルスに汚染した物に触れた手から鼻や口へと入ったりすることで感染する場合がほとんどです。欧米人などのように、挨拶するときにキスやハグ(抱擁)で濃厚なスキンシップを交わす習慣があれば感染リスクが高まります。これに対し、スキンシップが一般的でない日本人は生活で他人と一定の距離が保たれる分ウイルスに感染することが少なく、ウイルスにさらされたとしても、その量は相対的に少ないと考えられます。衛生意識が高く、世界でもきれい好きとされる日本人にとって、トイレを使った後や帰宅時の手洗いなどはコロナ禍の前から習慣になっています。
 我慢強く、他人に迷惑をかけることを嫌い、世間の目を気にする国民性によって、ほとんどの人はマスクをすることをいとわず、不要不急の外出自粛要請にも従順に対応したことも欧米諸国との違いです。全ての国民を公的医療保険制度でカバーする国民皆保険で医療機関にかかりやすく、都会だけでなく地方の医療・公衆衛生の水準が高いことも、重症化や死亡に至るのを防いでいるはずです。海外ではインドやブラジルはもとより先進国の米国でさえ、費用負担が重く十分な治療を受けられない患者が多いのが実情です。日本政府が感染拡大の初期に、クラスター(感染者集団)を徹底的に追うことによって感染の大規模な広がりを防止する対策を取ったことが、欧米ほど感染が拡大せず、重症者や死亡者の数を抑えることにつながったと考える専門家もいます。
2020年11月16日掲載