日銀が四半期ごとに全国の企業約1万社を対象に景況感や事業計画、物価の見通しを聞き取るのが全国企業短期経済観測調査(短観)です。特に注目されるのが景況感を聞く業況判断指数(DI)です。景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いて算出します。「最近」(調査回答時点)だけでなく「先行き」(3カ月後)の判断も調べます。業況判断DIがプラスなら経済活動が活発で、マイナスならば景気が悪化しているということになります。日銀短観は調査企業数が多く、回収から3週間程度で公表されるため速報性も高く、金融市場やエコノミストの関心が高い経済指標です。
20年6月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断DIはマイナス34で、リーマン危機後の09年6月以来の低水準になりました。大企業非製造業はマイナス17で、20年3月の調査から25ポイント悪化し、悪化幅は過去最大になりました。中堅企業は製造業がマイナス36、非製造業がマイナス27で、中小企業は製造業がマイナス45、非製造業はマイナス26といずれも悪化。全産業合計はマイナス31と景気減速の影響がはっきりと表れました。
景気の悪化は雇用環境にも影響します。有効求人倍率は仕事を探している1人に対して何件の求人があるかを示す数値で、ハローワークを通じた企業からの求人数を登録している求職者数で割ったものです。ハローワークへの求人・求職申し込みには通常2カ月の有効期間があり、有効期間内の求人・求職者数で計算します。有効求人倍率が1より高ければ人手不足感が強まっており、逆に1より低ければ就職が難しい状況にあることになります。有効求人倍率(季節調整値)は19年12月まで1.5倍以上の高水準で推移していましたが、20年1月に1.5倍を下回って以降低下が続き、同年7月は1.08倍まで低下しました。
そこで気になるのは失業者数の動向です。総務省が毎月発表する完全失業率は、企業の求人が減ることで起こる「需要不足失業」と、技能や年齢などの条件面で求職者と企業の希望がかみ合わない「ミスマッチ失業」を合わせた数字です。20年7月の完全失業率(季節調整値)は2.9%で、同年5月と並び17年5月以来の高さになりました。同年1月と比べ0.5ポイント悪化しました。