ビジュアル・ニュース解説

景気の現状を把握し将来を占う経済指標

2020.10.5 掲載
新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界の景気が低迷し、いつ回復するのか予測できない状況が続いています。景気の現状や将来どうなるかはいろいろな経済指標を基に判断されます。今回は主な景気指標を取り上げ、その概要や景気判断にどのように使われているかなどを解説します。

1.国の経済の状況や市場規模を示すGDP

1.国の経済の状況や市場規模を示すGDP
 内閣府は2020年7月、経済学者やエコノミストらで構成する「景気動向指数研究会」を開き、12年12月に始まった景気の拡大局面が18年10月に終了し、後退局面に入ったと認定しました。景気回復局面は71カ月となり、02年2月から08年2月まで73カ月続き、戦後最も長かった「いざなみ景気」に届きませんでした。12年12月からの景気回復については19年1月、茂木敏充経済財政・再生相(当時)が「戦後最長になったとみられる」と表明しており、景況感と実際の景気判断は必ずしも一致しないことがわかります。
 今回の景気の後退局面入りの時期を判断する基になったのが景気動向指数です。景気動向指数は景気全体の現状を知ったり、将来の動向を予測したりするのに使われます。生産や消費、雇用などの動向を示す30の経済指標の動きを統合して毎月算出されます。景気の現状を示す「一致指数」のほか、数カ月先の動きを示す「先行指数」、半年から1年遅れで反応する「遅行指数」があります。内閣府は一致指数について「改善」や「悪化」などの基調判断を示します。景気の回復期と後退期の転換点は一致指数の上昇や低下の幅や期間から総合的に判断されます。
 ニュースにしばしば登場するのが国内総生産(GDP)です。GDPは一定期間に国内で生み出されたモノやサービスに、生産活動によって付け加えられた利益の総計です。GDPの伸び率が成長率で、成長率が高ければそれだけ市場規模が拡大し、経済が好調なことを示します。
 GDPをその時の市場価格で表したものを名目GDPと呼びます。ただ、モノやサービスの価格は変わります。価格が20%上がれば名目GDPも20%増えます。経済の実態を把握するためには物価変動の影響を差し引く必要があります。物価変動の影響を除いたものが実質GDPです。GDPは通常1年単位で表しますが、それだとその数値は1年以上たたなければわかりません。直近の経済状況を知るため、内閣府は4半期ごとにGDP成長率と年率換算値を発表しています。GDPは通常、各四半期末から約1カ月半後に速報値、その約1カ月後に改定値が発表されます。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻になったのは20年4月からです。20年4-6月期のGDP速報値は実質の季節調整値で1-3月期から7.8%、年率換算で27.8%減少。リーマン・ショック後の09年1-3月期の年率17.8%減を大きく超え、戦後最大の落ち込みとなりました。改定値は28.1%減とさらに下方修正されました。
2020年10月5日掲載