ビジュアル・ニュース解説

フェイクニュース、SNSで拡散し社会に混乱

2020.7.20 掲載
真実に見せかけた偽りの情報である「フェイク(偽)ニュース」がSNS(交流サイト)上を中心に拡散され、社会に混乱をもたらすケースが世界中で増えています。新型コロナウイルス感染をめぐっても様々な偽ニュースが広がっています。今回はフェイクニュースが拡散される背景やそれを生む技術の高度化、防止するための取り組みなどについて解説します。

1.SNSの急速な普及で社会問題に

1.SNSの急速な普及で社会問題に
 フェイクニュースとは社会を混乱させたり、利益誘導をしたりするために発信された、真実を装った虚偽の情報です。虚偽の情報や報道は古くからありました。政治や行政に関わる特定の人物や団体を誹謗(ひぼう)中傷する目的で、間違った内容が書かれた出所不明の文書「怪文書」が流布されたり、マスメディアが虚偽であることを認識した上で特定の意図を持って報道する「捏造(ねつぞう)報道」がされたりしています。
 これまでも数多くあった虚偽の情報が近年、フェイクニュースと呼ばれて社会問題となっている背景にはSNSの急速な普及があります。従来は新聞記者などの経験を積んだプロに限られていた情報発信がSNSを使えば誰でもできるようになり、不確かな情報や根拠のない推測、個人の思い込み、悪意のある虚偽情報などが簡単にネット上へと発信されるようになりました。これらの偽情報の一部は、ツイッターで他の人の投稿を再投稿する「リツイート」などのSNSの機能を使って、短時間で次から次へと拡散されます。
 情報がSNSを通じて拡散されることによって、多くのSNS利用者はそれが正しい情報だと思い込み、内容が衝撃的であればあるほど、義務感や正義感などからその情報をさらに世の中に広めようとします。熱狂的に広められた偽情報には、特定の国や政府、団体、有名人などを名指しで攻撃するものが少なくありません。その情報の真偽が吟味され、たとえ間違っていることが分かっても、訂正情報が拡散されることはまれです。このため、多くの人はその偽情報を「真実」と信じたままとなり、情報の対象の名誉や信頼は長期間損なわれ続けます。このほか、偽ニュースは受け取った人たちが強い不安や怒りを感じるなど、社会に様々な悪影響を及ぼすことが問題です。
2020年7月20日掲載