偽ニュースをつくり出す技術も進歩しています。人工知能(AI)による画像処理によって、映像の中の人物を他の人物と入れ替える技術「ディープフェイク」や、映像内の人物の表情を変えられる技術「Face 2 Face」などが開発され、17年ごろから俳優の顔を入れ替えたドラマの映像が海外の動画サイトに出回っています。このような偽映像は専用ソフトと一般的なコンピューターがあれば誰でも簡単に作れます。
偽ニュースの増加を受けて、各国は対策を進めています。欧州連合(EU)の欧州委員会は18年4月、フェイスブックやツイッターなどSNS企業に偽ニュース対策を求める行動規範を作り、毎月の実施状況を報告させています。米連邦議会は18年、SNS企業の幹部らを呼んだ公聴会を複数回開き、対策への協力を呼び掛けました。日本でも偽ニュースを減らすため、総務省が政府やIT(情報技術)のプラットフォーマー、学者らが対策を議論する場を設けることを検討しているほか、LINE、フェイスブック、ツイッター、TikTok(ティックトック)のSNSを運営する国内法人などが一般社団法人を設立し対策を強化しています。
民間では独自に情報のファクトチェック(事実確認)をする動きも広がっています。米国では「スノープス」や「ポリティファクト」などの専門団体がネット上の情報などを日々チェックし、真偽を発表しています。国内ではNPO法人のファクトチェック・イニシアティブなどが、ネット上に出回る情報のうち「誤りなのでは」といったコメントがついたものをAIで自動抽出し、この情報について協力メディアが取材や調査をして事実確認をしています。米デューク大学によると、19年時点の世界のファクトチェック機関は188団体あり、17年と比べて6割増えています。
真偽チェックを人手に頼らない技術開発も進められています。国立情報学研究所と仏パリ東マルヌ・ヴァレ大学は自然な映像と加工された偽の動画を見分けるAIの開発に取り組んでいます。ディープフェイクで作った偽動画の98%を見分けられるといい、数年内に実用化を目指しています。