ビジュアル・ニュース解説

フェイクニュース、SNSで拡散し社会に混乱

2020.7.20 掲載
真実に見せかけた偽りの情報である「フェイク(偽)ニュース」がSNS(交流サイト)上を中心に拡散され、社会に混乱をもたらすケースが世界中で増えています。新型コロナウイルス感染をめぐっても様々な偽ニュースが広がっています。今回はフェイクニュースが拡散される背景やそれを生む技術の高度化、防止するための取り組みなどについて解説します。

2.一定の事実が含まれていたことが拡散を助長

2.一定の事実が含まれていたことが拡散を助長
 最近では2020年3月下旬から、新型コロナウイルスの感染拡大に関してSNS上で「4月1日から東京がロックダウン(都市封鎖)される」という偽情報が拡散しました。日本経済新聞が東京大学の鳥海不二夫准教授の協力を受け、ツイッター上で「ロックダウン」の関連語を含む公開投稿の数と推移を分析したところ、デマや周辺情報は東京都の小池百合子知事が週末の外出自粛を要請したころから急増していました。
 「明日にも安倍総理の緊急会見があり、4月1日ロックダウンの発表があるそうです。テレビ局関係者の情報です」との偽ニュースは、もっともらしい情報源が明記されていることなどで注目され、3月26日には情報の共有や否定も含む関連投稿が111万件を超えました。
 専門家は拡散を助長した要因として、閉鎖的なコミュニティー内で認められたいという承認欲求が多くの人に働いたことや、安倍首相の会見日程など一定の事実が含まれていたため、信ぴょう性のある情報と受け止められたことなどを指摘しています。
 総務省が20年5月に実施した新型コロナウイルス感染をめぐる偽ニュースや誤情報についての調査によると、学業や仕事での使用を除き週1日以上インターネットを利用する15〜69歳の男女2000人に「お湯を飲むと予防に効果がある」「政府がロックダウンを行う」など17種類の偽ニュースを示したところ、1つでも見聞きした人は72%で、そのうち偽情報を信じたり、真偽がわからなかったりした人は76.7%に上りました。偽情報を信じた人の割合は60歳代で20.0%だったのに対し、15~19歳は36.2%、20歳代は34.4%と若い年代ほど受け入れやすいことも分かりました。
 新型コロナウイルス関連以外でも、神奈川県大井町の東名高速道路で17年6月、あおり運転で停止させられたワゴン車に大型トラックが追突しワゴン車の家族4人が死傷した事故をめぐり、逮捕された容疑者と同姓の建設会社社長を容疑者と関連づけるデマなどがネットの掲示板サイトやSNS上に書き込まれ、同社に嫌がらせや中傷の電話が相次ぎました。16年4月に起きた熊本地震では「動物園からライオンが逃げ出した」との偽ニュースがSNS上で広がりました。
 海外では16年の米大統領選挙の際、ロシアが民主党候補者のヒラリー・クリントン氏をおとしめる偽ニュースを拡散し、当選したトランプ氏を利する結果となったとされ、偽ニュースが注目されるようになりました。
2020年7月20日掲載