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次世代の計算機・量子コンピューター、実用化へ前進

2020.7.6 掲載
次世代の超高速計算機として期待される量子コンピューターの研究開発が加速しています。米グーグルが量子コンピューターを使って複雑な計算問題をスーパーコンピューターより大幅に短い時間で解き、実用化への道筋が見えてきました。今回は量子コンピューターの動作の仕組みや、その活用分野、今後どのような問題が懸念されるかなどについて解説します。

1.原子や電子など量子の物理法則を応用して計算

1.原子や電子など量子の物理法則を応用して計算
 量子とは物質を構成する原子や、原子を形作る電子、中性子、陽子など極小の粒子のことで、「粒」と「波」の性質を併せ持っています。量子コンピューターは様々な量子の世界でのみ成り立つ物理法則である量子力学を応用したコンピューターです。
 従来のコンピューターは電流のオン、オフなどによって「0」と「1」のいずれかの「ビット」という単位で情報を表し、0と1の並び方によって大量のデータを処理します。これに対し、量子コンピューターは0と1のどちらでもある「重ね合わせ」という量子の世界の特殊な状態を利用し、「量子ビット」を単位として同時並行でデータ処理をします。重ね合わせはコインが回っており、表と裏がまだ決まっていないような状態です。これによって、従来はスーパーコンピューターでも処理に膨大な時間が必要だった計算が格段に短い時間でできます。
 量子コンピューターの基本的な概念は1980年代に生まれました。量子コンピューターは金属を極低温まで冷やしたときに電気抵抗がゼロになる超電導と呼ばれる現象などを利用して回路を極低温下で動作させますが、理論上の性能を完全に発揮できるものはまだ開発されていません。重ね合わせの状態が極めて不安定でごく短時間で消滅してしまうため、量子の状態を制御して計算に必要な時間を確保することが難しいからです。
2020年7月6日掲載