かつて原油価格は産油国の利益を守るために1960年に設立されたOPEC加盟国の生産調整に左右されました。しかし80年代からはOPECに加入していない産油国が台頭。とりわけ2010年代から米国のシェールオイル生産が拡大し、18年には米国の原油生産量が世界首位となったことなどで、OPECの価格への影響力は相対的に低下しました。
このところの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞によって石油の需要は大幅に減少。原油価格は20年3月以降急落し、4月には決済期限が近づいたWTIの期近物が史上初めてマイナス価格をつけました。これに対し、OPECにロシアなど非加盟の主要産油国を加えたOPECプラスは同年5月から、世界の供給の1割に当たる日量970万バレルの協調減産を始めました。しかし、なお供給過剰の状態は続いており、価格の上昇は限られています。
欧州では既に新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための外出制限が一部緩和されており、米国でもすべての州が経済活動を部分再開しました。日本でも全国に発令されていた緊急事態宣言が解除されるなど、経済活動の正常化へ動き始めていますが、感染拡大の第2波が到来して再び石油の需要が急減する恐れもあります。新型コロナウイルスの感染拡大が収束しても世界経済の停滞は長期にわたって石油需要を抑える可能性があるため、石油価格が本格的に上昇するには時間がかかりそうです。