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新型コロナが直撃、原油価格の低迷続く

2020.6.1 掲載
「最近、ガソリンが安くなった」と感じていませんか? これは原料の原油価格が下落したためです。原油価格は2020年3月に急落し低迷が続いています。米国市場では同年4月に先物価格が史上初めてマイナスになりました。価格の大幅な下落を招いた最大の要因は新型コロナウイルスの感染拡大です。世界経済の急減速で石油の需要が落ち込みました。今回は原油生産の状況や価格決定の仕組みなどについて解説します。

2.需給や投機資金の流入、産油国での紛争などが価格を左右

2.需給や投機資金の流入、産油国での紛争などが価格を左右
 原油価格の動向を知る国際指標はニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の先物市場で取引されるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)や北海ブレント原油、ドバイ原油の価格です。WTIは米国のテキサス州やニューメキシコ州を中心に産出する硫黄分が少ない軽質油で、北米の指標です。北海ブレント原油は英国の北海にあるブレント油田などで採掘される軽質油で、欧州の指標です。中東産原油への依存度が高いアジアではアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ産のドバイ原油のスポット価格が指標とされます。
 原油価格を決める要因にはその時の需要や供給、在庫の増減の需給ファンダメンタルズと、将来の需給に対する懸念や、投機資金の流入など金融の動向、産油国での紛争・テロなどの地政学的リスクといったプレミアム要因があります。需給ファンダメンタルズの影響では、中国経済の発展による石油需要の拡大や需給調整を狙った原油の減産による価格の高騰などがあり、プレミアム要因では中東戦争が原因のオイルショックやリーマン・ショックによる景気減速などが挙げられます。
2020年6月1日掲載