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新型コロナ「パンデミック」終息目指しワクチンなど開発急ぐ

2020.5.18 掲載
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。感染症が世界で大規模に流行し制御できなくなった状態は「パンデミック」と呼ばれ、これまでに何度か起きています。今回は過去のパンデミックや感染予防の切り札とされるワクチン、感染拡大を収束に向かわせる「集団免疫」などについて解説します。

1.スペイン風邪のパンデミックで5000万人以上死亡

1.スペイン風邪のパンデミックで5000万人以上死亡
 パンデミックの語源はギリシャ語のすべてを意味する「パン」と人々を意味する「デモス」です。世界保健機関(WHO)はパンデミックの警戒水準について、「パンデミック間期」「警戒期」「パンデミック期」「移行期」の4段階を設けています。ただし、WHOはこれまでパンデミックの対象をインフルエンザに限っており、新型コロナウイルス感染については「現状を表す表現」としています。
 歴史上のパンデミックでは14世紀に欧州で流行したペストや、19世紀から20世紀にかけて地域を変えながら7回も大流行したコレラなどが知られます。ペストとコレラはそれぞれ細菌のペスト菌、コレラ菌の感染が原因です。
 新型コロナウイルスのようなウイルスによるパンデミックはスペイン風邪やアジア風邪、香港風邪、新型インフルエンザなどがあります。このうちスペイン風邪によって、当時の世界の人口約18億人のうち5000万人以上が死亡したと推定されており、ほぼ同じ時期に起きた第1次世界大戦の死者数を上回りました。流行は1920年まで続き、日本国内でも全国民の約4割の約2380万人が感染したとされます。2009年の新型インフルエンザは214カ国・地域で感染が確認されました。日本では1年間で約2000万人が感染しましたが、毒性が弱く死者は約200人にとどまりました。
 大規模に流行した感染症としてはこのほか、天然痘やエイズ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、結核、マラリアなどが知られます。このうち天然痘は人類が根絶した唯一の感染症で、WHOは1980 年に根絶を宣言しました。
 現代は航空機などの交通網の発達で、感染症が発生すると世界へ急速に拡大する恐れがあります。コロナウイルスによるパンデミックも、こうした社会環境が影響しています。
2020年5月18日掲載