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患者それぞれに最適治療をするがんゲノム医療始動

2020.3.16 掲載
日本人の死因第1位の病気、がん。この病気を対象とした画期的な医療として期待されるのが、患者それぞれのがんの遺伝子の変化を調べて最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」です。2019年6月から遺伝子の検査に公的保険が適用され、本格的にスタートしました。今回はがんゲノム医療の仕組みや治療体制などについて解説します。

1.がんは遺伝情報のゲノムの異常で発症

1.がんは遺伝情報のゲノムの異常で発症
 ゲノムは人体の“設計図”となる遺伝情報のことです。遺伝情報を伝えるのがDNA(デオキシリボ核酸)で、体の各細胞の核にある染色体の中に折りたたんで収められています。DNAは塩基と呼ばれるアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の物質からなる2本の鎖が、らせん状のはしごのようにつながった形状をしています。ヒトの場合、細胞1個に 24種46 本の DNA があり、それを全部つなぐと約2メートルにもなります。DNAの一部にある遺伝子が、細胞がつくり出すたんぱく質の種類や性質を決めます。どんなたんぱく質が生み出されるかは、基本的にA、T、G、Cの並び方で決まります。これによって肌、目の色や体の部分の形状などが親から子に受け継がれます。
 ヒトの体は約37兆個の細胞からできており、その中に2万種類以上の遺伝子があります。細胞は絶えず分裂して増殖し、新しいものに置き換えられます。このとき、DNAの複製の失敗によって遺伝子に変異ができ、ゲノムが変わってしまうことがあります。紫外線や化学物質などを浴びることによってDNAが傷つくこともあります。体内にはこの傷を治す仕組みがありますが、遺伝子変異がそのまま残ったり、変異が親から子供に引き継がれたりすることもあります。がんの発症は何らかの遺伝子変異によって正常な細胞増殖の仕組みが崩れて際限なく増殖するがん細胞が生まれ、その増殖をコントロールできなくなることです。
2020年3月16日掲載