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患者それぞれに最適治療をするがんゲノム医療始動

2020.3.16 掲載
日本人の死因第1位の病気、がん。この病気を対象とした画期的な医療として期待されるのが、患者それぞれのがんの遺伝子の変化を調べて最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」です。2019年6月から遺伝子の検査に公的保険が適用され、本格的にスタートしました。今回はがんゲノム医療の仕組みや治療体制などについて解説します。

3.国立がん研究センターを推進拠点として全国の病院を組織する体制を構築

3.国立がん研究センターを推進拠点として全国の病院を組織する体制を構築
 がんゲノム医療は国を挙げた大きなプロジェクトで、18年に発足したC-CATを中心に、実際に患者の治療や支援を行う病院として、全国11カ所の中核拠点病院、34カ所の拠点病院、161カ所の連携病院が組織されています。
 実際の治療は「がん患者の治療に当たる連携病院から、がんの症例情報をC-CATに、がんの検体を指定検査会社に提出」→「指定検査会社ががん遺伝子パネル検査を行い、検査結果をC-CATに提出」→「C-CATからの検査結果を基に、中核拠点病院・拠点病院がエキスパートパネルで治療方針を検討・決定し、連携病院に提案」という一連の手順を踏みます。
 この体制はまだスタートしたばかりですが、がんが増殖する仕組みは複雑で遺伝子変異も多様なため、患者に適した治療法や薬は簡単には見つからないのが実情です。厚生労働省がまとめた調査によると、19年6~10月にがん遺伝子パネル検査を受けた805人のうち、患者に適した薬が見つかったのは88人(10.9%)にとどまりました。また、保険診療でがん遺伝子パネル検査を受けられるのは、既存の最適な治療法である「標準治療」がなかったり、その治療の効果がなかったりした場合のみという制約があるため、年間約100万人に上る国内のがん発症者のうち、がんゲノム医療の対象は1%程度に限られます。
2020年3月16日掲載