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南海トラフ地震発生なら大きな被害――地震はどのようにして起きる?

2020.3.2 掲載
周辺の地下の深部に複雑な構造があり、大地震が多発する日本。大きな被害が出た東日本大震災や熊本地震は記憶に新しいところです。将来、発生が予想される大地震として「南海トラフ地震」が注目されています。今回は地震が起きる仕組みや発生予測の現状などについて解説します。

1.海溝型と活断層型のほか深発地震も

1.海溝型と活断層型のほか深発地震も
 地震の発生は地球の内部構造の変化と深い関わりがあります。地球の半径は約6400キロメートルで、その内部は地表に近い順に地殻、マントル、核の3つの層からなります。地表付近に数十キロメートルの厚さの地殻があります。その下の深さ約3000キロメートルまでがマントルで、高温高圧によって地殻より軟らかくなった岩石でできています。さらに深い場所の、地球の中心部をなすのが金属を主成分とした核です。
 マントルは年間数センチメートルの緩やかな速度で対流しています。地殻やマントル表層部がこの対流に載った板のように、かたまりとなってゆっくり移動します。この部分は「プレート」と呼ばれ、プレートの移動による力やひずみ、それに対する反発が地殻変動や地震が起こる原因となります。
 日本やその周辺で起き、大きな被害をもたらす地震の仕組みは主に2タイプに分けられます。1つは海の下のプレートと陸のプレートの境界で起こる「海溝型地震」で「プレート間地震」とも呼ばれます。海のプレートが地球の深部に沈み込むときに陸のプレートが一緒に引きずられ、たまったひずみに耐えられなくなって跳ね上がることで起こります。規模が比較的大きく、津波を引き起こすことが多いのが特徴です。2011年の東日本大震災はこのタイプでした。
 もう1つは「活断層型地震」あるいは「プレート内の断層による地震」と呼ばれます。地震を起こすエネルギーがプレートの移動から生まれることは海溝型と同じですが、活断層型は地下の岩盤の裂け目である断層が局所的な押したり引いたりする力によって動いたり、新たな断層ができたりして起きます。地震の規模は比較的小さいですが、都市部の直下で起きると大きな被害をもたらします。1995年の阪神大震災や2016年の熊本地震、18年の北海道胆振東部地震などが当てはまります。どちらも地下の比較的浅い場所で発生し、多くは震源の深さが100キロメートル未満です。
 この2タイプ以外に地下300キロメートルより深い海のプレート内で発生する「深発地震」があり、日本列島の周辺は世界的にも深発地震の多発地帯です。通常の地震は震源から遠ざかるほど揺れが小さくなりますが、深発地震は震源から遠い地域が大きく揺れることがあります。これは地震波がプレート内を伝わって弱まらずに地表付近に達するためとみられます。
2020年3月2日掲載