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南海トラフ地震発生なら大きな被害――地震はどのようにして起きる?

2020.3.2 掲載
周辺の地下の深部に複雑な構造があり、大地震が多発する日本。大きな被害が出た東日本大震災や熊本地震は記憶に新しいところです。将来、発生が予想される大地震として「南海トラフ地震」が注目されています。今回は地震が起きる仕組みや発生予測の現状などについて解説します。

2.南海トラフで30年内に70~80%の確率で大地震が発生

2.南海トラフで30年内に70~80%の確率で大地震が発生
 大地震が将来発生する可能性が高いことから、国や自治体が対策を進めているのが南海トラフ地震です。「トラフ」は細長い溝状の海底盆地で、南海トラフは九州東方の日向灘沖から駿河湾までの水深4000メートル程度の海底に伸びています。
 南海トラフでは北側のユーラシアプレートの下に、南側のフィリピン海プレートが年間数センチメートルの速さで沈み込んでいます。この周辺ではこれまで、沈み込みに伴うひずみの蓄積と、ひずみに耐えられなくなったプレートの跳ね上がりによる大地震が繰り返されており、その周期は約100~200年間隔とされます。南海トラフでは1944年の昭和東南海地震や1946年の昭和南海地震以来70年以上、大きな地震は起きていません。政府の地震調査委員会などはこの周辺を震源域として30年以内にマグニチュード(M)8〜9の大地震が70〜80%の確率で起こり、最大約34メートルの津波が発生すると推計しています。
 政府の中央防災会議が2019年5月に公表した試算によると、最悪の場合で南海トラフ地震の想定死者数は約23万1000人、全壊する建物は約209万4000棟、建物・資産の直接被害額は約171兆6000億円に上ります。また、政府の地震調査委員会は20年1月、南海トラフ地震が発生した際に各地を襲う津波の確率を公表。太平洋側や瀬戸内の352市区町村のそれぞれについて、津波の高さを「3メートル以上」「5メートル以上」「10メートル以上」に分け、30年以内に発生する確率を「6%未満」「6%以上26%未満」「26%以上」の3段階で示しました。それによると、木造家屋が全壊するとされる3メートル以上の津波に見舞われる確率が26%以上だったのは1都9県の71自治体。このうち5メートル以上の発生確率が26%以上だったのは高知市や三重県大紀町など29自治体。10メートル以上の発生確率が6%以上26%未満だったのは高知県黒潮町や静岡県沼津市など21自治体でした。
2020年3月2日掲載