ビジュアル・ニュース解説

世界に広がる新型肺炎、訪日消費に打撃

2020.2.17 掲載
中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が猛威を振るっています。中国本土の感染者数は2020年2月14日時点で累計6万3800人、死者数は1300人を超え、感染者は日本の33人を含め28カ国・地域に広がっています。世界保健機関(WHO)は同年1月、新型肺炎について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言。同年2月12日時点で129カ国が中国からの入国を制限する水際対策を取っています。日本も新型肺炎を感染症法で定める指定感染症に指定し、患者に入院などを強制できるようにしました。今回は新型肺炎の症状や感染の現状、対策などについて解説します。

3.中国経済の混乱で世界の貿易が縮小する恐れも

3.中国経済の混乱で世界の貿易が縮小する恐れも
 新型肺炎の感染拡大は中国の製造業にも大きな打撃を与えています。武漢市は素材や自動車、ハイテクなど幅広い産業が集まる戦略都市で、湖北省は中国の国内総生産(GDP)の4%強を占めています。18年の自動車生産台数は中国全体の約1割の241万台で、武漢だけで500以上の車部品メーカーが操業しています。素材メーカーでは中国石油化工集団が韓国企業との合弁拠点でエチレンを生産。中国最大手の宝武鋼鉄集団の大型製鉄所もあります。交通封鎖によって企業の休業が長引き、供給網の乱れで中国全体の生産が低迷する可能性が高まっています。世界最大規模の貿易国である中国の経済が混乱すれば、世界の貿易が縮小するリスクが強まります。
 新型肺炎の感染拡大は国内の訪日外国人(インバウンド)消費にも影響を与えています。中国の海外団体旅行禁止が春節(旧正月、1月24~30日)休暇と重なったため、ホテルの予約キャンセルが相次ぎ、例年は中国人客でにぎわう観光地は大幅な客数減に見舞われました。百貨店大手の春節期間の免税売上高は前年比2桁マイナスが目立ち、大手家電量販店の中には春節期間の免税売上高が前年同期の9割未満になったところもあります。19年の中国人観光客の旅行消費額は1兆7718億円で全体の4割弱を占めており、渡航禁止が長引けば訪日客の消費に大きな影響が出そうです。
 中国では新型肺炎による死者が増え続けており、国内でも1人が死亡しました。新型ウイルスについてはわからないことが多く、企業や研究機関がワクチンや治療薬の開発を始めていますが、まだ実用化されておらず油断はできません。厚生労働省は風邪や季節性インフルエンザと同様、マスクを付けたり、せきやくしゃみをするときに鼻や口をティッシュなどで覆ったりする「せきエチケット」や手洗い、うがい、アルコール消毒などの徹底を呼び掛けています。
2020年2月17日掲載