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世界に広がる新型肺炎、訪日消費に打撃

2020.2.17 掲載
中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が猛威を振るっています。中国本土の感染者数は2020年2月14日時点で累計6万3800人、死者数は1300人を超え、感染者は日本の33人を含め28カ国・地域に広がっています。世界保健機関(WHO)は同年1月、新型肺炎について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言。同年2月12日時点で129カ国が中国からの入国を制限する水際対策を取っています。日本も新型肺炎を感染症法で定める指定感染症に指定し、患者に入院などを強制できるようにしました。今回は新型肺炎の症状や感染の現状、対策などについて解説します。

1.中国国外へ感染拡大、WHOが「緊急事態宣言」

1.中国国外へ感染拡大、WHOが「緊急事態宣言」
 武漢市では19年12月から原因不明の肺炎患者が増え始め、20年1月に新型コロナウイルスが検出されました。コロナウイルスは直径約100ナノ(ナノは10億分の1)メートルの球形で表面に突起があり、その形が王冠に似ていることからギリシャ語で「王冠」を意味する「コロナ」と名付けられました。
 人に日常的に感染するコロナウイルスは4種類あり、風邪の10-15%はこれらが原因です。発熱やせきなどの症状が出ることが多く、通常は重症にはなりません。動物から感染するものも重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスと中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの2種類あります。02年11月に中国の広東省で発生したSARSはキクガシラコウモリが感染源と考えられており、03年7月までに30を超える国・地域の8000人以上が感染し重症の肺炎で770人を超す死者が出ました。ヒトコブラクダから感染したと考えられているMERSは12年にサウジアラビアで初めて患者が確認され、19年11月末までに27カ国で約2500人が感染し約860人が重症肺炎で死亡しました。
 新型コロナウイルスによる肺炎の感染力や致死率はまだよくわかっていません。感染経路も十分に解明されていませんが、人から人へ感染する可能性は同居の家族や医療従事者などが患者と「濃厚接触」した場合に限られるとされます。潜伏期間は他のコロナウイルスの状況から最長で2週間とみられます。20年1月中旬以降、感染者数が急増し、タイなどアジア各国や北米、欧州などでも感染者が確認されています。WHOは1月末、中国で感染者数の拡大に歯止めがかからず、死者数が200人を突破したうえ、中国国外へも感染が広がり始めたことから緊急事態宣言を出しました。ただし、中国への渡航や貿易の制限にまでは踏み込んでいません。
2020年2月17日掲載