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「人工の脳」めざすAI、広がる利用

2019.12.16 掲載
大量のデータ処理技術などによって「人工の脳」を目指す人工知能(AI)の利用が急速に広がりつつあります。AIの開発で米国や中国に後れをとった日本は実用化や利用の国際ルールづくりを急いでいます。AIは自動車の自動運転など様々な分野で生活を便利にすることが期待できますがリスクもあります。今回はAIについて解説します。

1.大量のデータから規則性や判断技術を自ら学習

1.大量のデータから規則性や判断技術を自ら学習
 AIは人間が備える言語の理解や推論の能力、経験に基づく問題解決力、判断力などを持たせたコンピューターシステムのことです。1956年に米国で開かれた共同研究会「ダートマス会議」で初めて「人工知能」という言葉が使われました。60年代にかけて、コンピューターによって単にデータの計算結果を出すだけでなく、データを基に実際には起きていない現象や、起きるだろう未来を推論するシミュレーションが注目されました。この機能は現在の仮名の漢字変換や特定の文字列に続く文字列の予測にも応用されています。
 推論機能をさらに向上させることで、膨大なデータの中から瞬時に解答を見つけ出せるようになりました。この機能を活用した代表例が97年に当時のチェス世界王者に勝利した米IBMのスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」です。チェスに勝つことだけを目的にしたアルゴリズム(計算手法)で、膨大な過去のデータから最適な一手を選ぶことによって人間との頭脳戦に勝利しました。その後、あいまいさを処理するファジー理論や脳の神経回路を模したニューラルネットワークの研究が進み、90年代から2000年以降にかけてAI関連の技術開発が加速しました。
 15年には米グーグル傘下の英ディープマインドが開発した「アルファ碁」がチェスや将棋より複雑なゲームといわれる囲碁でプロ棋士を破りました。この快挙を実現したのが、コンピューターが大量のデータから規則性や判断技術を自ら学ぶ機械学習にニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)です。これによって、相手の指し手に対応して、数千万局面のデータから瞬時に最適な指し手を導くことができるようになりました。
2019年12月16日掲載