ビジュアル・ニュース解説

「人工の脳」めざすAI、広がる利用

2019.12.16 掲載
大量のデータ処理技術などによって「人工の脳」を目指す人工知能(AI)の利用が急速に広がりつつあります。AIの開発で米国や中国に後れをとった日本は実用化や利用の国際ルールづくりを急いでいます。AIは自動車の自動運転など様々な分野で生活を便利にすることが期待できますがリスクもあります。今回はAIについて解説します。

3.雇用の減少や判断基準の「ブラックボックス」化に懸念

3.雇用の減少や判断基準の「ブラックボックス」化に懸念
 AI導入の広がりで関心を集めているのが、AIが人の知能を超えるシンギュラリティー(技術的特異点)が到来するのではないかということです。米未来学者のレイ・カーツワイル氏はシンギュラリティーが45年に到来すると予測しています。
 将来は労働力不足に対応してAIの導入が進み、多くの仕事がAIに奪われるのではないかとの懸念も出ています。また、AIが独自の基準で複雑な計算を繰り返すため、結論に至る過程が外部からわかりにくく、判断基準が「ブラックボックス」になる恐れも指摘されています。
 これに対し、政府は18年12月に①人間中心②AIの判断が差別的にならないように判断過程を説明③個人情報の慎重な扱い④公正な競争環境の確保などを盛り込んだAIを使う際の7原則をまとめました。経済協力開発機構(OECD)もAI普及に伴うリスクを抑えるため19年5月、AIの開発や運用に関する基本指針を採択し、人に本当に役立つかを前提に考える「人間中心」や、差別をなくす「公平性」、判断の理由を説明できる「透明性」などを求めています。
 AIのブラックボックス化を克服するため、企業の「XAI(説明可能なAI)」の技術開発も加速しています。NECは深層学習より旧式の技術を応用し、分析結果を示せる「ホワイトボックス型AI」を開発。富士通は既存技術を使った分析結果と深層学習の結果を比べ、AIの判断根拠を類推する手法の開発に取り組んでいます。
 調査会社のIDCジャパンは、国内のAIシステム市場規模が18年推計の532億円から23年には3578億円まで急拡大し、この間の年間平均成長率は46.4%と予測。富士キメラ総研はAI関連ビジネスの国内市場が30年度に2兆1286億円に達すると見込んでいます。今後、急速に普及するAIと、内包するリスクを抑えながらいかに共存するかが試されます。
2019年12月16日掲載