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高齢ドライバーの事故多発、官民挙げて対策急ぐ

2019.9.16 掲載
高齢化が進むなか、お年寄りのドライバーの交通事故の多発が社会問題になっています。ブレーキとアクセルの踏み間違いによる暴走事故が増えているほか、道路の逆走や鉄道線路への侵入も目立ちます。問題の深刻化で、国や地方自治体は対策に乗り出し、民間企業も高齢ドライバーの支援に積極的に取り組んでいます。今回は高齢ドライバー問題の背景や官民の取り組みなどについて解説します。

4.高齢者専用の運転免許の新設や後付けの安全運転支援装置を開発

4.高齢者専用の運転免許の新設や後付けの安全運転支援装置を開発
 高齢化の進行で75歳以上の運転免許保有者が20年には600万人に増えると推計され、高齢ドライバー問題は今後、さらに深刻化することが懸念されています。政府はこの対策として、高齢者専用の運転免許をつくる方針です。自動ブレーキなど安全支援機能を持つ車のみ運転できる免許で、運転できる車の要件など詳細は19年度中に詰めます。このほか、衝突被害を軽減するブレーキの国内基準設定と新車への搭載義務付けや、公共交通機関が不十分な地方での高齢者が車を運転しないでも暮らせる社会づくり、免許を返納した高齢者が一定条件下で乗り放題になる相乗りタクシーの導入などを推進します。
 国土交通省は19年7月、国内の自動車メーカー全8社に対し、後付けできる安全運転支援装置の開発を要請しました。ブレーキと誤ってアクセルを踏み込んだ際に急加速を防ぐ機能を持つ装置で、既に新車への搭載率が高まっていますが、今後は販売済みの車にも普及を促します。これを受けて、東京都は19年度中に70歳以上になる都内在住のドライバーの後付け安全運転支援装置の購入に対し、費用の9割(上限10万円)を補助することを決めました。
 一方、企業でも高齢ドライバーを支援する新しい技術の開発が進んでいます。トヨタ自動車は従来のセンサーが進行方向に壁や車などの障害物を検知した場合に限って作動する後付け安全運転支援装置を改良し、進行方向に障害物がなくても人がいるときにアクセルを誤って踏み込んでも、エンジンの出力を抑えて急加速しないようにする機能を19年中にも搭載できるようにします。
 車の運転をやめた高齢者向けに電動アシスト自転車の改良も進んでいます。電動アシスト自転車は筋力が弱いお年寄りでも楽にスピードを出せる一方、車体が重く止まる時などにバランスを崩しやすくなります。このため、電動アシスト自転車の事故による死亡者の約9割が高齢者です。ブリヂストン、パナソニックなどの大手メーカーやベンチャー企業はより軽量・小型で安定した電動アシスト自転車の開発に取り組んでいます。
 運転免許証を自主返納した高齢者に対するユニークな支援も増えています。静清信用金庫(静岡市)は返納者に金利優遇などの特典をつける定期預金の取り扱いを開始。家電量販店大手のノジマは返納者が店舗で買った5000円以上の商品を無料で自宅まで届けるサービスをスタートしました。天然温泉満天の湯(横浜市)は運転免許証を自主返納し、運転経歴証明書を持つ高齢者の入浴料を本人を含め5人まで150円割り引くサービスをしています。
2019年9月16日掲載