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夏の風物詩の打ち上げ花火、地域活性化にも一役

2019.8.5 掲載
夏の風物詩としてすぐに思い浮かぶ花火。これから花火大会や夏祭りで打ち上げ花火を見る機会が増えるでしょう。花火見物が定着したのは江戸時代で300年以上の歴史があるとされます。花火大会は多くの集客が見込めるため、地域経済の活性化への貢献も期待されています。今回は打ち上げ花火の種類や仕組みなどについて解説します。

2.火薬に混ぜた金属粉で変わる発色

2.火薬に混ぜた金属粉で変わる発色
 江戸時代の歌川広重作の浮世絵「名所江戸百景」に描かれた両国花火は、光跡も火花もオレンジ色です。当時はこの色しか出せなかったのです。明治時代には様々な金属が工業原料として使われるようになり、それらの金属を燃やした時に固有の色が出る炎色反応で、花火に様々な色をつけられるようになりました。
 花火の火薬と混ぜて使用される金属粉には、赤く発光するストロンチウムや青緑の銅、黄色のナトリウム、黄緑色のバリウムなどがあります。これらの金属粉を混ぜた火薬を「星」と呼び、花火玉の中にどんな星をどのように配置するかで花火の形や色が決まります。
 花火玉の中心部分には星を飛ばす割薬が、その周囲には星が配置され、張り合わせた紙などで固めて球形にされます。花火玉の発射には打ち上げ筒を使います。打ち上げ筒の底部には打ち上げ用の火薬を敷き、その上に花火玉を置きます。外部から火薬に点火すれば、花火玉が打ち上げられると同時に花火玉の導火線に着火します。以前は打ち上げ筒に火種を落として点火していましたが、現在は安全で確実に着火できる電気式の点火装置が使われることが多くなっています。特にスターマインのような仕掛け花火では、順序通りに着火するために電気式や電子制御の着火装置が使われます。
 花火玉の大きさは打ち上げ筒の内径で表されます。以前は尺貫法が使われていましたが、現在は号数表示(1寸〈3.03センチ〉=1号)が中心で、尺表示もまだ併用されています。1尺は約30.3センチですから、3尺玉なら直径は約90センチです。9月の片貝まつり(新潟県小千谷市)で打ち上げられる4尺玉は直径約1.1メートル、重さは400キログラムを超える巨大なもので、その打ち上げ筒は約5メートルです。開いた花火の直径は3尺玉で約600メートル、4尺玉なら約750メートルにもなります。
 片貝まつりの4尺玉は世界最大の花火でしたが、米国で最近、直径約140センチ、重さ約1トンの花火が打ち上げられたため、その座を明け渡しています。ただ、毎年恒例で打ち上げられているのは片貝まつりの4尺玉だけです。
2019年8月5日掲載