ブラックホールは無限大と言えるほど密度が高く、強い重力を持つために周囲のガスなどあらゆる物質、さらには光まで吸い込んでしまう天体です。質量が太陽の30倍を超える星の寿命が尽きて、新しい星が生まれたように見える「超新星爆発」と呼ばれる大爆発を起こすと、中心が自らの重力に耐えきれずに潰れて極限まで密度が高まりブラックホールが誕生すると考えられています。そのような星の数だけブラックホールが存在することになります。宇宙には無数の星の集まりである銀河が2兆以上あると推定されており、それぞれの中心には巨大なブラックホールが存在するとされます。
ブラックホールの研究は1916年、ドイツの天文学者カール・シュバルツシルトが物理学者アルバート・アインシュタインの一般相対性理論から、巨大な質量が高密度で集中する天体では周囲に「事象の地平面」(イベント・ホライズン)と呼ばれる光も抜け出せない境界線ができると予測したことで本格的に始まりました。
科学者たちは当初、ブラックホールは理論上で想定されたもので実際には存在しないと考えていました。ブラックホールができるほど超高密度の天体が実際にあるとは考えられなかったからです。その後の研究で、その条件を満たす高密度の天体が存在することがわかりました。
ブラックホールは光が出ないため直接観測することはできませんが、その巨大な重力で近くの天体の動きに影響を与えます。1970年代に「はくちょう座X-1」という天体から強さが激しく変化するX線を観測。調べたところ、この天体は小さいものの質量は大きく、周囲を大きな星が回っていることがわかり、X-1はブラックホールだと初めて指摘されました。
かつてブラックホールはひたすら周囲の物体をのみ込み質量が増大していくと考えられていましたが、英国の物理学者スティーブン・ホーキングは1974年、ブラックホールからわずかに熱が漏れ出していることを理論的に解明。このため少しずつエネルギーを失って、最後はなくなってしまう可能性を指摘しました。