ビジュアル・ニュース解説

存在予想から100年、姿を見せたブラックホールって何?

2019.7.15 掲載
強い重力で近くの物質や光をのみ込む天体、ブラックホールは100年以上前に存在が予想されたものの、これまでその姿をとらえることができませんでした。日米欧などの国際共同研究グループは世界の8台の電波望遠鏡を連動させてブラックホールの撮影に初めて成功し、2019年4月に公表しました。今回はブラックホールとその撮影の成果について解説します。

3.日米欧などのグループが8台の電波望遠鏡を使い撮影(2)

3.日米欧などのグループが8台の電波望遠鏡を使い撮影(2)
 はるかかなたの星を撮影する場合は通常、その星が発する電波を電波望遠鏡でとらえて画像にします。電波望遠鏡は人間の目で見える可視光よりも波長が長い電波を集め、受信機から出力される信号をデジタル化して天体の形状などを探ります。ブラックホールが周囲のガスなどを吸い込むときに排水溝に水が流れ落ちるように渦巻き状に高速で回転します。ガスなどはこの回転と落下の摩擦で高温になってエックス線などを出します。今回はこのエックス線などを観測し、ブラックホールの黒い影を浮かび上がらせました。
 離れた場所にある8台の電波望遠鏡の観測時刻などを1億年で1秒もずれない原子時計を使って合わせ、それぞれの観測データを合成することで月面のゴルフボールを観察できるほどの高解像度撮影を実現しました。
 観測したのは2017年4月ですが、各望遠鏡で得られたデータは1日約350テラ(テラは1兆)バイトと膨大で、200人以上の研究者が様々な先端技術を駆使してスーパーコンピューターで解析するのに2年がかかりました。
 画像にはブラックホールを取り巻く直径約1000億キロメートルのオレンジ色の明るいリングが写し出されています。リングは太陽系がすっぽり入る大きさです。このブラックホールの推定質量は太陽の65億倍と試算されています。
2019年7月15日掲載