ビジュアル・ニュース解説

世界の課題解決を目指すSDGs、企業の取り組み広がる

2019.6.3 掲載
貧困や飢餓の撲滅など世界が抱える課題を2030年までに解決することを目指す国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」への企業の取り組みが広がっています。SDGsは国だけでなく企業や非政府組織(NGO)など利害関係者すべてに参加を求めていることに加え、環境や社会、企業統治に優れた企業に投資するESG投資が地球温暖化対策をきっかけに活発になったことが背景にあります。今回はSDGsの概要や実現に向けた取り組みについて解説します。

2.ESG投資の拡大が企業に取り組みを促す

2.ESG投資の拡大が企業に取り組みを促す
 日本政府は16年に首相ら閣僚からなるSDGs推進本部と、様々な分野のステークホルダーが意見交換するSDGs推進円卓会議を設置。①あらゆる人々の活躍推進②健康・長寿の達成③成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション④持続可能で強靭(きょうじん)な国土と質の高いインフラの整備⑤省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会⑥生物多様性、森林、海洋などの環境の保全⑦平和と安全・安心社会の実現⑧SDGs実施推進の体制と手段――を優先課題とするSDGs実施指針を策定しました。
 SDGs推進本部が18年にまとめた「SDGsアクションプラン2019」では上の図のように、①SDGsと連動する「Society5.0」の推進②SDGsを原動力とした地方創生、強靭かつ環境に優しい魅力的なまちづくり③SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメント――を柱にSDGs実施指針を改訂し、指針の8つの優先課題への取り組みを拡充するとしています。
 企業の間でもSDGsへの取り組みが広がっています。企業はこれまで社会的責任(CSR)の一環として法令順守や環境対策、社会貢献に取り組み、企業の価値向上の手段として位置付けてきました。
 SDGsが世界共通の目標となったことで、企業にもSDGsの実現や定着への取り組みが求められています。既に多くの企業が環境対策や性的少数者(LGBT)などマイノリティーの差別排除、女性が活躍できる組織・風土づくりなどを推進していますが、一層の役割拡大が期待されています。その一方で、環境や社会、企業統治に優れた企業に投資するESG投資が拡大しており、国際団体GSIAによると世界のESG投資は18年時点で約31兆ドル(約3400兆円)に上ります。つまりSDGsに取り組まない企業は将来、投資引き上げの対象になりかねません。大企業だけでなく中小企業もSDGsへの取り組みを進めなければ取引に支障が出る恐れがあります。
2019年6月3日掲載