近年、人気が高まっているのが国産ワインです。以前は食用品種のブドウでつくったり、輸入果汁を原料にしたりするものが多く、評価はいまひとつでしたが、2000年ごろからブドウの品種や栽培法にこだわるつくり手が増え、品質が向上しました。
国産ブドウだけを使って国内でつくった日本ワインは、和食に合う繊細さを評価する愛飲家が増えています。日本固有の品種のブドウ「甲州」が10年に、13年には「マスカット・ベーリーA」が国際ブドウ・ワイン機構(OIV)にワイン用品種としてそれぞれ登録されたことに加え、国際コンクールで日本ワインが相次ぎ受賞するなど、世界で評価が高まっていることが人気に拍車をかけています。日本ワインの出荷量は年々伸びており、16年度は1万5849キロリットルと前年度より5%増加しました。
ただ、以前は原料が輸入果汁でも「国産」と表示したり、銘柄名に日本の地名を使用したりする場合があり、ラベル表示で日本ワインとそれ以外を区別できませんでした。国税庁は18年10月から表示ルールを厳しくし、国産ブドウを100%使って国内で醸造したものだけに「日本ワイン」の表示を認めることにしました。特定の産地名の表示も、その一帯で収穫したブドウを85%以上使うことが条件となりました。基準の明確化で国産であることが消費者に分かりやすく、海外でも認知されやすくなるため、一層の需要拡大につながると期待されています。
国内の大手ワインメーカーは需要の伸びを商機と捉えて増産に動き出しています。マンズワインは20年度までに、長野県のワイナリー周辺でブドウの栽培面積を約3割拡大。同ワイナリーでの日本ワインの生産量も25年度までに3割増やします。メルシャンは19年秋までに長野県内の2カ所にワイナリーを新設。サッポロビールは北海道に大規模ブドウ農園を開設し、既に長野県に保有する自社畑と合わせた栽培規模を2倍以上に広げます。このほかアサヒビールが北海道でブドウを栽培する農地を取得、サントリーワインインターナショナルは山梨県でもブドウの栽培を始めました。
日本ワインの人気が上向いているとはいえ、16年の国内のワイン流通に占める割合は4.8%に過ぎず、まだ発展途上といえます。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が19年春に発効すれば、欧州産ワインへの輸入関税は撤廃されます。日本ワインがこれまでより買いやすくなる欧州産に対抗し、世界の5大産地のひとつに数えられるまでになった「ジャパニーズ・ウイスキー」のようなブランドへと前進できるのか正念場を迎えます。