海底資源の探査も注目を集めています。最も期待されているのがメタンハイドレートです。メタンハイドレートは天然ガスの主成分であるメタンと水の分子が低温・高圧の状態で結晶化した氷状の物質で、火を付けると燃えるため「燃える氷」とも呼ばれます。日本周辺の海底にも多く埋蔵されているとみられ、経済産業省は01年に開発計画を策定。13年3月にちきゅうを使って愛知・三重両県沖の海底のメタンハイドレートからメタンガスの産出に成功しました。
有望な海底資源として近年注目を集めているのはレアアースです。レアアースは埋蔵量が少なかったり、精錬が難しかったりして手に入りにくいレアメタル(希少金属)のうち17元素の総称で、ハイブリッド車や電気自動車に使う高性能磁石などに欠かせない物資です。早稲田大学と東京大学の研究チームは18年4月、日本の最東端にある南鳥島(東京都)周辺の海底のレアアースの資源量が世界の消費量の数百年分に相当する1600万トン以上に達することを明らかにしました。現在、世界のレアアース生産量の約8割を中国が占めますが、南鳥島周辺のレアアースを利用できれば、価格や供給の安定につながります。
このほか、沖縄や小笠原諸島周辺の海底には熱水とともに噴き出した金や銀、銅などが海水で冷えて煙突状に堆積した海底熱水鉱床があります。北西太平洋に点在する海山(かいざん)には、レアメタルのコバルトやニッケルが岩石の表面をアスファルト状に覆ったコバルトリッチクラストが多く見られます。
石油資源開発や新日鉄住金エンジニアリングなどが参加する「次世代海洋資源調査技術研究組合」は18年4月、海中を動き回る無人潜水機「水中ドローン」を複数使ってこれらの海底資源を探す実証実験を南西諸島の北西沖で始めています。
島国である日本は海底資源の探査や開発などの権利を持つ排他的経済水域(EEZ)が約447万平方キロメートルに及び、領海と合わせると世界6位の広さがあります。近海の海底資源が商業利用できるようになれば、輸入に頼る鉱物やエネルギー資源の一部を自給できるようになるかもしれません。