1981年に英国でマウスの細胞から万能細胞のひとつの「胚性幹細胞(ES細胞)」が作られ、98年には米国の研究グループがヒトで作製に初めて成功しました。2000年代に入ると世界で研究が進められましたが、その一方でES細胞は胎児になる前の受精卵を壊して作製するため、倫理面から批判の声が上がりました。患者自身の細胞からES細胞を作製するのは技術的に難しく、他人の細胞から作ったES細胞を使った組織や細胞を移植すると拒絶反応が起こる問題もあります。
日本では01年の国の指針でES細胞の使用を基礎研究に限定したため、ES細胞に代わる万能細胞の研究が進みました。その結果生まれたのがiPS細胞です。京大の山中教授らの研究グループが07年に世界で初めてヒトの皮膚細胞からiPS細胞の作製に成功。患者自身の細胞から作製できるため、培養した組織や細胞を移植しても拒絶反応が起こりにくく、再生医療の切り札になると期待されています。山中教授はiPS細胞の研究で12年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。