財政の深刻な赤字状態が続けば、政策の自由度は狭まります。さらに借金が返済できなくなる債務不履行(デフォルト)が懸念される事態になれば、国債の売却が進んで長期金利が上昇し、経済に悪影響を与えます。このため、財政再建は政府が取り組まなければならない最重要課題の一つです。
財政健全化への第一歩が、単年度の歳出を国債発行などの借金に頼らず、税収だけでまかなえる状態にすること、つまりPBの黒字化です。PBが黒字なら歳出が年間の税収などの歳入の範囲内に収まり、財政赤字がこれ以上増えない状態です。日本のPBは1992年度から赤字が続いています。
小泉政権時代の2006年に、政府は11年度までに国と地方を合わせたPBを黒字化する目標を掲げましたが、10年に目標時期を20年度に先送り。安倍政権が18年6月に閣議決定した骨太の方針に盛り込まれた新たな財政健全化計画では、PB黒字化の時期を25年度にさらに先送りしました。目標を達成するには、高齢化の進行で膨らみ続ける社会保障費の削減など、歳出の大幅な見直しに取り組む必要があります。
増税も避けられません。財政再建に向けて14年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。15年10月には10%に引き上げられる予定でしたが、景気への影響などに配慮して2度延期されました。
政府は18年の骨太の方針に、19年10月に消費税率を10%に引き上げる方針を明記しました。国民の反発が強い消費税率を予定通り引き上げられるか。また、歳出を削減するため社会保障制度の抜本改革を断行できるか――。財政健全化に向けて政府の取り組みが問われます。