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国家予算と財政の現状を知る

2018.7.16 掲載
政府は2018年6月の閣議で、次年度の予算編成の方針となる経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を決定しました。方針に盛り込まれた新しい財政健全化計画では、政策の経費を借金をせずにまかなう基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化の目標時期をこれまでより5年先送りして25年度としました。目標の達成には1年間の支出(歳出)の一層の削減と収入(歳入)の国債発行以外による拡大が避けられません。今回は日本の国家予算と財政の現状について解説します。

5.歳入の4割を国債発行に依存、財政健全化が課題(2)

5.歳入の4割を国債発行に依存、財政健全化が課題(2)
 財政の深刻な赤字状態が続けば、政策の自由度は狭まります。さらに借金が返済できなくなる債務不履行(デフォルト)が懸念される事態になれば、国債の売却が進んで長期金利が上昇し、経済に悪影響を与えます。このため、財政再建は政府が取り組まなければならない最重要課題の一つです。
 財政健全化への第一歩が、単年度の歳出を国債発行などの借金に頼らず、税収だけでまかなえる状態にすること、つまりPBの黒字化です。PBが黒字なら歳出が年間の税収などの歳入の範囲内に収まり、財政赤字がこれ以上増えない状態です。日本のPBは1992年度から赤字が続いています。
 小泉政権時代の2006年に、政府は11年度までに国と地方を合わせたPBを黒字化する目標を掲げましたが、10年に目標時期を20年度に先送り。安倍政権が18年6月に閣議決定した骨太の方針に盛り込まれた新たな財政健全化計画では、PB黒字化の時期を25年度にさらに先送りしました。目標を達成するには、高齢化の進行で膨らみ続ける社会保障費の削減など、歳出の大幅な見直しに取り組む必要があります。
 増税も避けられません。財政再建に向けて14年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。15年10月には10%に引き上げられる予定でしたが、景気への影響などに配慮して2度延期されました。
 政府は18年の骨太の方針に、19年10月に消費税率を10%に引き上げる方針を明記しました。国民の反発が強い消費税率を予定通り引き上げられるか。また、歳出を削減するため社会保障制度の抜本改革を断行できるか――。財政健全化に向けて政府の取り組みが問われます。
2018年7月16日掲載