世界の半導体市場はこれまで3~5年周期の好不況を繰り返してきました。供給不足になると半導体メーカーは設備投資を拡大しますが、新たな生産ラインが稼働する頃には需要が一巡し、供給過剰となって市況が悪化します。この需要と供給のミスマッチによる好不況の波をシリコンサイクルといいます。
半導体市場は近年、このサイクルを覆す勢いの活況が続いています。半導体の業界団体、世界半導体市場統計(WSTS)は17年11月、同年の世界の半導体販売額が前年比20.6%増の4086億ドル(約45兆3600億円)となり過去最高を更新すると予測。18年も17年比で7.0%増の4372億ドルと拡大が続くとみています。
活況の背景には、スマホ向けの需要増に加え、IoTやデータ分析、ロボットの高機能化に欠かせないAI、高速通信規格「第5世代(5G)」、自動運転など次世代技術の登場で、新たな半導体需要が生まれていることがあります。サムスン電子がスマホなどで画像や文書を記憶するフラッシュメモリーの生産能力を倍増させ、車載用半導体大手のイスラエル企業、モービルアイをインテルが買収するなど、新たな需要の取り込みを狙う設備投資やM&Aが活発化しています。
日本勢もルネサスエレクトロニクスがマイクロコンピューター(マイコン)で、ソニーがスマホや自動車に使うCMOSセンサーでそれぞれ世界トップクラスのシェアを握るなど、高付加価値品で強みを発揮しています。半導体の素材や製造装置の開発・製造ではなお高い技術力を持ち、川上から川下までの供給力では世界に引けを取りません。活況の波に乗ってどこまで世界シェアを回復できるか、注目されます。