ビジュアル・ニュース解説

中央銀行の役割を知る

2018.3.19 掲載
政府は2018年2月、中央銀行である日本銀行の黒田東彦総裁を再任する人事案を国会に提示しました。これに先立ち、米国の中央銀行制度の中核機関である米連邦準備理事会(FRB)の議長にジェローム・パウエル氏が就任し、その政策手腕が注目されています。今回は中央銀行の役割やトップ人事が注目を集める理由、日銀の今後の課題について解説します。

1.金融政策によって物価の安定を図る

1.金融政策によって物価の安定を図る
 中央銀行は国の金融機構の中核となる公的な銀行です。日本は日銀、英国はイングランド銀行、欧州連合(EU)は欧州中央銀行(ECB)がこれにあたります。米国ではFRBを中心に複数の機関が分担して中央銀行の役割を担っています。
 中央銀行には主に以下の3機能があります。
①発券銀行
 銀行券(紙幣)を独占発行します。銀行券を安定して供給するとともに、価値(紙幣の信用)が損なわれないよう、汚損したら廃棄などの管理をしています。
②銀行の銀行
 民間銀行は中央銀行に預金口座を開設しています。この口座を通じて民間銀行から預金を受け入れたり、資金を貸し出したりする「銀行にとっての銀行」の役割を果たすほか、銀行間の決済を仲立ちする機能も担います。
③政府の銀行
 国税などで受け入れた政府の資金を管理します。国債や外国為替関連の事務の一部も政府から委託されています。
 中央銀行の最も重要な役割は、物価の安定を図ることを通じて経済の健全な発展を支えることです。この役割を果たすため、民間銀行への貸出金利や通貨供給量を操作する金融政策を実行します。米国のFRBは物価の安定に加え、雇用の最大化も使命としています。
 主要国の中央銀行の金融政策は、為替や株式市場などを通じて世界の市場や経済に影響を及ぼします。このため、金融政策を主導する中央銀行のトップの発言や人事は常に注目されます。日銀のトップは総裁で、最高意思決定機関である政策委員会の議長を務め、金融政策を審議・決定する金融政策決定会合を年8回招集します。FRBのトップである議長は金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の委員長を兼任し、政策決定をリードします。
2018年3月19日掲載