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日米貿易不均衡、強まる是正圧力

2017.11.20 掲載
米国のトランプ政権発足後、貿易不均衡が日米間の重要な外交問題になっています。2017年2月に両国首脳が日米経済対話の設置で合意。同年10月までに会合が2度開かれ、今後の通商協議の行方に関心が高まっています。トランプ米大統領は同年11月の初来日の際も、日本政府に改めて貿易不均衡の是正を強く求めました。今回は日米間の貿易摩擦と経済協議の経緯や背景、今後の交渉の見通しについて解説します。

4.日米FTA協議の行方が今後の焦点

 90年代後半以降は米の対日貿易赤字が減り、日米の貿易摩擦は沈静化しました。その背景には自動車など日本の多くのメーカーが生産拠点を米国に移したほか、バブル経済の崩壊で日本経済が長期の低迷に陥り、半導体など日本メーカーの国際競争力が弱まったことなどがあります。ただ、日米間の貿易不均衡は今もなお残っており、2016年の米の対日貿易赤字は689億ドル(約7兆7000億円)で、相手国別では中国に次ぎ2位でした。
 17年1月に米国でトランプ政権が発足しました。トランプ大統領は米の貿易赤字を問題視しており、日米間の貿易不均衡が再び外交問題として浮上しています。
 トランプ大統領は就任早々、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明。多国間での貿易交渉ではなく2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を目指しています。日本は米とFTAを締結すれば、コメや牛肉など農産品の関税などでTPPを上回る市場開放を迫られる公算が大きいため、FTAの締結交渉には慎重姿勢です。
 日本政府はかつてのように個別の産業に米の矛先が向かうのを避けるため、まず両国間での経済協力の協議を米側に提案。17年2月の安倍首相とトランプ米大統領の首脳会談では日米経済対話の設置で合意しました。①貿易・投資ルール②経済政策③インフラ投資・エネルギーの3分野を主要テーマとし、麻生副総理とペンス米副大統領を対話のトップに同年10月までに2回実施。10月の会合では、日本が米国車など輸入車の検査手続きを緩和することで合意しました。
 同年11月に初来日したトランプ大統領は、日本とのFTA交渉には言及しなかったものの、「日本に対する貿易赤字を減らさねばならない」と発言し、不均衡是正を強調しました。ただ、トランプ政権は2国・地域間交渉を重視するのに対し、日本はTPPなど多国間での枠組みを優先しており、姿勢の違いが際立っています。日米の2国間通商協議が本格的に始まるのは18年秋の米中間選挙後との見方が有力ですが、難しい交渉を迫られそうです。
2017年11月20日掲載