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国連と安全保障理事会について知る

2017.10.16 掲載
北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、国連の安全保障理事会の対応が注目を集めています。安保理は2017年9月、同国の核実験強行に対して石油の輸出規制に初めて踏み込む制裁決議を採択しました。しかし、安保理のこれまでの制裁措置は十分な効果を上げておらず、北朝鮮の強硬姿勢に歯止めをかけられるかは不透明です。今回は国連の成り立ちや安保理の役割、北朝鮮問題への対応などについて解説します。

4.核・ミサイル実験を強行する北朝鮮に安保理が制裁決議

4.核・ミサイル実験を強行する北朝鮮に安保理が制裁決議
 常任理事国に拒否権があるため、5カ国間の利害対立によって国連の紛争対応が停滞することは少なくありません。2011年から政権軍と反体制派の戦闘が続くシリア内戦をめぐり、安保理は17年2月に政権の化学兵器使用に対する制裁を決議しようとしましたが、ロシアと中国は拒否権を発動しました。この背景にはシリアの反体制派を支持する米欧と、アサド政権と関係が深いロシアとの対立があります。
 現在、日本にとって最大の外交懸案は北朝鮮問題です。2000年代以降、ミサイル発射や核実験を強行してきた北朝鮮に対し、安保理はその都度、制裁決議を採択してきました。しかし、中国やロシアの反発で一部を修正したり、採択が遅れたりすることがたびたびありました。両国は北朝鮮と関係が深く、国境を接しているため、制裁には慎重姿勢をとっています。これまでの制裁も国連加盟国に履行が義務付けられてはいるものの罰則はないため、北朝鮮と親しい関係にある中東やアフリカなどの国々は従わず、十分に効果が上がっていません。
 安保理は17年8月、国際社会の非難にもかかわらずミサイル発射を続ける北朝鮮に対し、石炭や鉄などの輸出を全面的に禁止する制裁を科しました。さらに9月には北朝鮮への原油輸出を現状維持にするとともに、石油関連製品の輸出を3割削減するほか、主要産品である繊維を禁輸する追加制裁決議を採択しました。北朝鮮の最大の石油輸入先は中国で、同国の対応が制裁の実効性を左右するとみられます。
 国連の加盟国数は発足当初の4倍近くに増え、東西冷戦の終結や新興国の台頭など国際社会も様変わりしましたが、安保理の常任理事国の顔ぶれは変わらないままです。00年代前半に安保理の改革機運が高まり、05年に日本、ドイツ、ブラジル、インドの4カ国が連携して、常任理事国枠を拡大する決議案を出しましたが廃案になりました。
 安保理の常任理事国枠の拡大には国連憲章の改正が必要で、拡大に反対する国もあり、改革論議はまだ進んでいないのが現状です。
2017年10月16日掲載