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電気自動車へシフト機運高まる

2017.10.2 掲載
電気自動車(EV)など電動車両の普及を促す機運が世界で高まっています。環境対策として石油依存からの脱却が狙いで、英国やフランスは2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止。中国も英仏に追随する方針で、インドは国内で販売する車を30年までに全てEVにする目標を掲げています。これに対応し、自動車メーカーはEVの開発を急いでいます。今回はEVの概要や各国がEVの普及を後押しする狙い、メーカーの開発動向などについて解説します。

2.英仏が40年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止

 EVは今のところ、ガソリン車と比べて走行距離が短いうえ価格が高いため、購入は環境意識の高い人や富裕層などに限られ、広く普及するまでには至っていません。しかし、最近はEVをめぐる状況が大きく変わろうとしています。
 フランスと英国は17年7月、40年までに国内でのガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を相次ぎ打ち出しました。このほかオランダやノルウェーが25年以降、ディーゼル車やガソリン車の販売禁止を検討しており、自動車大国のドイツも30年までにガソリン車などの販売を禁止する決議を16年秋に国会で採択。欧州では自動車の「脱石油」を推進する国が相次いでいます。
 新興国でもEVの普及促進を掲げる国が増えています。インドは17年4月、国内で販売する車を30年までに全てEVにすると表明。中国は18年にも、一定比率のエコカーの販売をメーカーに義務付けるほか、ガソリン車やディーゼル車の生産・販売を禁止する方針で導入時期を検討しています。
 EVの普及促進が世界的な潮流となっている背景には、地球温暖化対策が喫緊の課題となっていることがあります。16年11月に発効した温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は、今世紀後半にCO₂などの温暖化ガス排出量を実質ゼロにすることを目指しています。ガソリン車やディーゼル車が排出するCO₂は温暖化の主因の一つで、走行時に排ガスを出さないEVなどで代替すればCO₂が低減できます。
 車の排ガスによる大気汚染も深刻です。燃費性能の良さで欧州で人気が高いディーゼル車は、ガソリン車と比べて排出するNOxの量が多く、大気汚染が懸念されています。15年に独フォルクスワーゲンによるディーゼル車の排ガス不正問題が発覚し、性能に対する不信が高まったことも「脱石油」のきっかけになっています。
 中国やインドがEVの普及促進に積極的なのは、自国の自動車産業を振興する狙いもあるとみられます。新興国のメーカーが日米欧のメーカーの高度なエンジン技術に追いつくのは容易ではありません。ガソリン車やディーゼル車に比べて構造が単純なEVは開発・製造のハードルが相対的に低く、後発メーカーでも勝機があるとみてEV支援に力を入れています。
2017年10月2日掲載