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「宗像・沖ノ島」が世界遺産に~登録の現状を知る

2017.9.4 掲載
2017年7月に福岡県の古代遺跡「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の世界遺産への登録が決まりました。国内での登録は5年連続で21件目です。ただ、登録を決める国連教育科学文化機関(ユネスコ)は新規登録の抑制策を検討するなど、近年は審査を厳格化しています。今回は世界遺産とは何かや登録への手順、課題などについて解説します。

4.地元には知名度向上や誘客拡大のメリット

4.地元には知名度向上や誘客拡大のメリット
 17年7月にポーランドで開かれた世界遺産委員会で、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の世界文化遺産への登録が決まりました。世界遺産への推薦の前提となる暫定リストには「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」(北海道、青森、岩手、秋田の各県)、「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)、「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)など9件が載っています。政府は17年1月、リストの中から「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島・沖縄両県)と「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎・熊本両県)をユネスコに推薦しました。18年の世界遺産委員会で審査されます。
 「我が町に世界遺産を」と狙う各地の動きは活発です。各地が世界遺産登録を目指す最大の理由は経済効果です。世界遺産に登録されれば国際的な知名度は飛躍的に高まり、国内だけでなく海外からも観光客の増加が期待できます。
 11年の「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園および考古学的遺跡群」(岩手県)の世界遺産登録で、遺跡のある平泉町の観光客数は12年に前年比38%増の264万人となりました。同じ年に自然遺産に登録された小笠原諸島では、11年度に定期船で来島した観光客数が2万2000人と前年度より61%増えました。
 ただ、世界遺産への登録直後のにぎわいがずっと続くとは限りません。島根県の石見銀山の観光客数は、登録された07年に71万4000人と前年比78%増加し、翌08年には81万3000人に達しました。しかし09年から減少に転じ、16年には約31万人と登録前を下回る水準まで落ち込みました。世界遺産による集客を維持するためには遺産の魅力を磨き、内外に発信し続ける努力が求められます。
2017年9月4日掲載