VR研究の先駆者は米国の計算機科学者のアイバン・サザランド氏で、1968年に初めてHMDを開発しました。「VR」という用語は、米国のベンチャー企業VPLリサーチが89年に製品化したHMDなどの紹介に初めて使いました。90年以降、米マサチューセッツ工科大学が中心となり、それまで別々の名称で呼ばれていた関連する研究領域のVRへの統一を進めた頃から第1次VRブームが始まりました。
日本でも90年代には、セガ・エンタープライゼス(現セガホールディングス)が横浜のミニテーマパークにVRアトラクションを設置したほか、松下電工(現パナソニック)がVR技術を使ってシステムキッチンを模擬体験しながら設計できるシステムを開発。任天堂のゲーム機「バーチャルボーイ」、ソニーのHMD「グラストロン」なども相次いで発売され、VRの認知度が一気に高まりました。
2012年にはOculusがRiftのプロトタイプを発表。これが人気を集め、現在の第2次VRブームへとつながりました。
HMDは高精細な映像を表示するディスプレー、頭・手の動きや傾きを検知して映像に反映するセンサー、音の強弱や方向を再現する音響など、多様な技術の集合体です。16年にHMDの発売が相次いだ背景には、これらの技術の飛躍的な進歩があります。スマートフォン(スマホ)の普及により、先端技術に使用する電子部品の価格が下落したことも追い風になりました。
なお、VRと似た技術に拡張現実(Augmented Reality=AR)があります。ARは現実の光景に様々なデジタル情報を重ね合わせて表示する技術で、16年7月から国内で配信されたスマホ用ゲーム「ポケモンGO」に活用されたことで注目されました。