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有機ELについて知る

2017.4.17 掲載
スマートフォン(スマホ)やテレビの次世代ディスプレーの最右翼と期待される有機ELパネルがいよいよ本格的な普及期を迎えそうです。米アップルは年内に発売するスマホ「iPhone」の新型に有機ELパネルを採用するとみられ、韓国や中国などのメーカーが設備投資を拡大しています。国内電機メーカーも有機ELテレビの販売計画を相次ぎ発表しており、ディスプレーの液晶から有機ELへのシフトは加速の兆しを見せています。今回は有機ELパネルの基本的な仕組みや特長、国内外メーカーの動向について解説します。

1.明暗がはっきり、曲げなどの加工しやすく

1.明暗がはっきり、曲げなどの加工しやすく
 EL(Electro Luminescence)とは物質に電圧をかけると発光する現象で、そのうち炭素を含む有機化合物によるELを有機ELといいます。有機ELを利用して発光する半導体素子が有機発光ダイオード(OLED=Organic Light Emitting Diode)で、これを使って表示するディスプレーが有機ELパネルです。
 有機ELパネルは現在主流の液晶に代わる次世代ディスプレーの有力候補です。画像はコントラスト(明暗)がはっきりしており、応答が速いので動画の表示能力に優れます。有機化合物が自ら発光するので、液晶のように光源(バックライト)が要らず、基板にガラスだけでなく樹脂も使えるため、曲げるなど形状の加工がしやすいのが特長です。
 有機ELパネルを生産するには、真空中で赤・緑・青に発光する有機化合物を気化させて回路基板に付着させる「蒸着方式」と、液体の発光材料をプリンターのように塗り分ける「印刷方式」の2方式があります。現在、実用化されているのは蒸着方式で、韓国のサムスンディスプレーやLGディスプレーなどが採用しています。印刷方式は2015年にパナソニックとソニーの有機EL事業を統合して設立されたJOLED(ジェイオーレッド)などが量産技術の開発を進めています。真空状態にするための設備が要らないため、蒸着方式よりコストを削減できます。JOLEDは16年に世界で初めて印刷方式で有機ELパネルを試作しましたが、まだ精度が低く量産技術は確立されていません。
2017年4月17日掲載