ビジュアル・ニュース解説

自動運転車について知る

2017.3.6 掲載
ドライバーが操作しなくても目的地まで安全に走行する自動車の自動運転技術が普及段階に入りました。ブレーキやハンドルなど複数の操作を同時にシステムがする自動運転車はすでに市販されており、2017年中には全ての運転をシステムが担う車が実用化される見通しです。自動車メーカーは本格的な普及に向けて、IT(情報技術)や通信、サービスなど異業種の企業と連携し、新しいビジネスモデルづくりを急いでいます。今回は自動運転車はどんなものかや関連する企業の動向、普及に向けた課題と政府の施策について解説します。

5.政府は普及に向けて環境整備を急ぐ

5.政府は普及に向けて環境整備を急ぐ
 政府も自動運転車の普及を後押ししています。物流効率化や高齢者の移動支援を目指す無人運転車による移動支援サービスを20年に実現する工程表を定め、実証実験を始めます。人が運転する先頭のトラックにセンサーなどで連結させた無人トラック数台が連なる隊列走行の実現に向けて、18年1月にまず全てのトラックに人が乗った状態で実証実験を開始。19年1月からは先頭車以外を無人にして実験します。17年度から全国の「道の駅」の周辺など10カ所以上で無人運転車やバスを運行し、高齢者らを病院や店に送迎する実験も始めます。
 自動運転車の普及には法整備が欠かせません。道路交通法は安全を確保するため、人による車の運転を求めています。日本も加盟する「道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)」も人による車の制御を定めており、実用化には見直しが必要です。政府は道路交通法の改正などを想定し、車の認定や安全基準、事故が起きた際の責任を明確にする関連法の改正案などを18年にまとめ、19年の通常国会への提出を目指しています。国連ではジュネーブ条約の改正も議論されており、実現すれば各国の法改正が進みそうです。
 運転手がいない車が街中を走り回れば、事故が起きるのではと不安や恐れを抱く人はいるでしょう。自動運転車が事故を起こした場合、法的責任は誰にあるのかや保険による賠償はどうなるのか、システムへのサイバー攻撃をどう防ぐかなど、課題は山積しています。自動運転車の普及には、技術上の課題の克服や対応する法整備だけでなく、社会全体の合意形成が求められそうです。
2017年3月6日掲載