国籍は個人が特定の国家の構成員である資格と定義され、参政権やその国に住む権利など、国民のさまざまな権利を与える基準になっています。国籍を誰に認めるかは国によって異なり、それぞれの国が独自に定める国内法に基づき与えられます。日本は憲法で「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」とし、国籍法で国籍の取得や喪失について定めています。各国で国籍取得の要件が異なることから、複数の国の国籍を持つ重国籍や、どの国の国籍も持たない無国籍の人が生まれる場合があります。
国籍の取得は主として、自国民から生まれた子に認める「血統主義」と、自国内において生まれた子に認める「生地主義」によります。
日本は父または母が日本国籍を持つ場合、生まれた場所が国内外にかかわらず、その子に日本国籍を与える「父母両系血統主義」を採用しています。かつては父親が日本人の場合に限る「父系優先血統主義」でしたが、1984年の国籍法改正で85年から母親が日本人でも認められるようになりました。
米国は生地主義を採用しています。米国内で生まれた子は親の国籍に関係なく同国籍が取得できるので、日本国籍を持つ夫婦が米国に在住中に生んだ子でも米国籍を取得する権利があります。
血統主義は中国や韓国など、生地主義はアルゼンチンなども採用しています。ただ、どの国もどちらか一方を徹底しているわけではなく、多くの国は無国籍の防止や子どもの人権擁護の観点などから併用しています。例えば欧州連合(EU)の多くの国は血統主義を採用していますが、自国に永住する外国人の子や孫に国籍の取得を認める例が少なくありません。日本でも、日本で生まれたが両親の所在が分からなくなったり、無国籍の親から生まれたりした子には日本国籍を認めています。