チョコレートの消費量が多い地域は、日常的に食べる習慣のある欧米です。なかでも1人当たりの消費が多いのはドイツやスイスで、それぞれ年間10キログラム前後を消費しています(2014年)。
一方、日本のチョコレート消費は特定の季節に集中しており、消費者のチョコレートへの年間支出金額のうちクリスマスシーズンの12月からバレンタインデーがある2月までが約4割を占めます。この季節にはチョコレート商戦が盛り上がるものの、国内の消費量は欧米に及びません。メーカー各社は国内市場にまだ開拓の余地があるとみて、販売拡大に向けて知恵を絞っています。
最近になって国内のチョコレート消費は盛り上がりを見せています。業界団体によると、15年度の1人当たりのチョコレートの年間消費量は約2キログラムで、この30年間で最高でした。また、15年のチョコレート市場は小売金額ベースで前年に比べ3.7%増の5040億円で、初めて5000億円を突破しました。消費の伸びに一役買っているのがシニアをはじめとする大人です。総務省の家計調査で14年のチョコレートへの支出金額をみると、50~60代の家庭のサンプルで05年に比べ5~6割増えており、30~40代も1~2割増えています。
チョコレートには抗酸化物質のポリフェノールが豊富に含まれ、がん、動脈硬化の予防や免疫力の向上、ストレスに対する抵抗力強化などの効果などが明らかになっています。このほか、集中力を高めるとされるテオブロミンなど、体にいいとされるさまざまな成分を多く含み、業界はかねてから健康効果のPRに力を入れてきました。最近は健康志向の「機能性チョコレート」と呼ばれる製品を相次いで投入したことが奏功し、購入者層が拡大しています。
機能性チョコレートの火付け役となったのが、ロッテが15年10月に発売した乳酸菌入りのチョコレート「スイーツデイズ乳酸菌ショコラ」です。チョコレートの味はそのままで、どこでも乳酸菌が取れるコンセプトで新たな消費者を呼び込んでいます。江崎グリコは16年3月に機能性表示食品のチョコレート「LIBERA(リベラ)」を発売。カロリーは一般的なチョコレートと同程度ですが、砂糖の一部を難消化性の食物繊維に換え、脂肪と糖の吸収を抑えるとしています。明治は16年夏からカカオの含有量が通常のチョコレートの2倍以上の「チョコレート効果」シリーズを増産したほか、カカオ豆の産地をアピールした「明治 ザ・チョコレート」シリーズも展開しています。
機能性チョコレートは一般のチョコレートと比べて販売価格が高く、安売りもされにくいため、メーカーにとって利益率が高いメリットがあります。メーカー各社が健康への効果を打ち出す商品に注力する流れは今後も続きそうです。
【参考文献】
「チョコレートの大研究」PHP研究所
「チョコレートの事典」成美堂出版
【統計データ出所】
全日本菓子協会
日本チョコレート・ココア協会