しかし、輸入ワインが中心だった国内のワイン市場は最近変わりつつあります。国産の人気が高まっているからです。最大の要因は品質の向上です。以前の国産ワインは食用品種のブドウで造ったり、輸入した濃縮果汁を原料にしたりするものが多く、輸入ワインと比べると評価はいまひとつでしたが、ここ10年くらいでブドウの品種や栽培法にこだわる造り手が増え、品質が向上しました。なかでも国内で栽培されたブドウだけを使って国内で造ったワインは「日本ワイン」と呼ばれ、和食に合う繊細さを評価する愛好家が増えています。「甲州」「マスカット・ベーリーA」などの日本固有の品種のブドウが近年、国際ブドウ・ワイン機構にワイン用品種として登録されたことに加え、国際コンクールで日本ワインが相次ぎ受賞するなど、世界で評価が高まっていることも人気に拍車をかけました。
日本ワインへの追い風に乗ろうと、ワイン最大手のメルシャンは14年に日本ワイン専門のバーを東京・六本木に出店。サッポロビールは15年に自社の日本ワインを提供する直営バーを東京・銀座に開業し、専用のショッピングサイトも立ち上げました。国税庁は15年に国産ブドウを100%使い、国内で醸造された果実酒だけを「日本ワイン」とする表示基準を策定し、18年秋から導入します。基準が明確になることで、消費者に分かりやすく、海外でも認知されやすくなるため、一層の需要拡大が期待されます。