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インフルエンザについて知る~進化する治療薬

2016.11.21 掲載
空気が乾燥し寒さが厳しいインフルエンザが流行する時期を間もなく迎えます。インフルエンザはこれまで、世界的な大流行で多くの死者を出したことが何度かありますが、特効薬が開発された現在では発病しても数日で完治します。さらに1日1回の服用で治療が期待できる新薬の開発が進んでおり、鼻の粘膜に噴霧するなどワクチンの接種方法も進化しています。今回はインフルエンザの基礎知識や新型発生の過程、治療薬とワクチンの開発動向について解説します。

3.世界的な大流行で4000万人を超す死者を出したことも(2)

3.世界的な大流行で4000万人を超す死者を出したことも(2)
 毎年のように流行するのはウイルスが少しずつ変異するためです。人間の体は一度ウイルスに感染すると、それを排除する抗体を作り、同じウイルスが体内に入っても発病しにくくする「免疫」と呼ばれる機能が備わっています。しかし、インフルエンザウイルスは毎年、増殖によりわずかに変異するため、前年の免疫をすり抜けてしまうのです。
 鳥や豚などを介してこれまでとは全く違うウイルスに変異し、これに人間が感染して流行することもあります。これが新型インフルエンザです。ほとんどの人が免疫を持っていないため感染が爆発的に広がり、「パンデミック」と呼ばれる世界的な大流行となる恐れがあります。新型インフルエンザは10―40年の周期で発生するとされ、20世紀には1918年のスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)、57年のアジア・インフルエンザ(アジア風邪)、68年の香港・インフルエンザ(香港風邪)と3度のパンデミックがありました。特にスペイン風邪は猛威をふるい、死者数が4000万人以上に上ったといわれます。2009年に豚由来の新型インフルエンザのパンデミックが起きたのは記憶に新しいところです。新型インフルエンザも免疫ができた人が増え、流行を繰り返すようになると季節性インフルエンザになります。
 鳥に感染する鳥インフルエンザは通常は人に感染しませんが、鳥との濃厚な接触があった場合などにまれに感染することがあります。鳥インフルエンザウイルスが上図のように人から人に連続して感染する新型インフルエンザに変異した例は確認されていませんが、今後の発生が懸念されています。
2016年11月21日掲載