国債のうち特に流通量の多い、固定金利で期間10年の新規に発行される長期国債の利回りは、期間が1年以上の資金を貸し借りする際の金利である長期金利の指標になっています。
国債は株式などと同様に市場で売買されており、価格は変動するため、券面に記された利率が同じでも、購入した時の価格によって満期までに得られる利回りは違ってきます。満期までに受け取る利息が同じなら、購入価格が高いほど利回りは低くなり、価格が安いほど利回りは高くなります。つまり、長期国債の価格が下落すると長期金利は上昇し、逆に長期国債の価格が上昇すると長期金利は低下します。
近年の国債価格と長期金利は日銀の金融政策から大きな影響を受けています。日銀は13年から、銀行から大量の国債を買い入れることで市場に出回る資金量の拡大を促す「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和政策を実施してきました。国債の価格を上昇させ、長期金利の低下を促すのが狙いの1つでした。
さらに日銀は16年1月、銀行が日銀にお金を預ける際の金利の一部をマイナスにする「マイナス金利政策」を導入しました。日銀にお金を預けても損をするため、国債を購入する銀行が増加。その後、世界景気の先行き不透明感が強まったため、安全資産である国債の人気が高まりました。国債の購入が増えた結果、16年2月には国内で初めて長期金利がマイナスを記録しました。
ただ、長期国債の利回りがマイナスまで低下したことで、国債で運用する年金や保険の利回りも悪化し、老後資金などへの不安が広がっています。こうした副作用を和らげるため、日銀は同年9月、長期金利の水準を「ゼロ%程度」に誘導する新たな枠組みを打ち出しました。国債の買い入れ額を柔軟に変えることで、長期金利が下がりすぎないように調整することが狙いです。今回の日銀の新たな政策が債券市場や長期金利にどのような影響を及ぼしていくかに注目が集まっています。