ビジュアル・ニュース解説

領海と排他的経済水域~海の国境について知る

2016.9.19 掲載
四方を海に囲まれ、周囲の海の広さは世界有数の日本。日本はエネルギーなどの資源に乏しいため、海底に眠る資源の活用が期待されています。ただ、中国や韓国とは管轄する海域の境界をめぐり対立が続いています。今回は海域の区分や国際ルール、日本と周辺国との問題について解説します。

3.「海の憲法」による紛争解決には限界も

3.「海の憲法」による紛争解決には限界も
 海は沿岸国に様々な恩恵をもたらすため、その権益をめぐる争いがこれまで絶えませんでした。各国は海の秩序を守るためのルール作りを進めてきましたが、大きく進展したのは第2次大戦後です。
 1945年に米国のトルーマン大統領が「米国の陸地から続く大陸棚の天然資源は米国のものだ」と宣言。これをきっかけに領海を一方的に広げようとする動きが各国に広がりました。そこで国際ルールを作ることになり、国連海洋法会議は58年、領海と接続水域に関する条約など海洋法4条約を採択しました。このときには領海の幅は定められず、82年に採択された国連海洋法条約で領海やEEZについて取り決められました。条約の加盟国は日本を含む約160カ国・地域にのぼります。
 「海の憲法」と呼ばれるこの条約も十分ではありません。2国の大陸棚がぶつかりあう場合の境界について明確にしておらず、世界各地で争いが起きています。
 また、条約は国家間の法的紛争解決のため、国際司法裁判所、国際海洋法裁判所、仲裁裁判所などの国際裁判所を利用できると定めますが、判決には強制力がありません。2016年7月、南シナ海で海洋進出を加速する中国に対し、フィリピンが国際法違反と訴えた仲裁裁判所の判決でフィリピンの主張が認められましたが、中国は受け入れないとしています。
2016年9月19日掲載