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領海と排他的経済水域~海の国境について知る

2016.9.19 掲載
四方を海に囲まれ、周囲の海の広さは世界有数の日本。日本はエネルギーなどの資源に乏しいため、海底に眠る資源の活用が期待されています。ただ、中国や韓国とは管轄する海域の境界をめぐり対立が続いています。今回は海域の区分や国際ルール、日本と周辺国との問題について解説します。

1.沿岸国の権利に応じて海域を区分

1.沿岸国の権利に応じて海域を区分
 国の主権が及ぶ陸上の領域である領土と同じように、海にも国の主権が及ぶ領域の「領海」があります。海に面する沿岸国の沿岸から一定距離内の海域が領海です。
 沿岸国が管轄する海域の範囲は国連海洋法条約によって定められています。この条約に基づき、沿岸国は引き潮時の海岸線から12カイリ(約22キロメートル)までを領海にできます。沿岸国の主権は領海の上空や海底の地下にまで及びます。漁業をしたり、石油や天然ガスなどの資源を開発したりする権利を独占でき、領海に外国船が許可なく入った場合は自国の法律で取り締まれます。ただし、外国船には沿岸国の平和や秩序、安全を害しない限り、領海を自由に通航できる「無害通航権」が認められています。
 沿岸国の権利が及ぶ海域は領海だけではありません。領海の外側の、海岸線から24カイリ(約44キロメートル)以内の海域を「接続水域」といい、領海内への不法侵入や銃器・麻薬の密輸などの犯罪の取り締まり、感染症の拡大などを防ぐため沿岸国が必要な規制ができます。
 接続水域の外側の、海岸線から200カイリ(約370キロメートル)までの「排他的経済水域(EEZ)」では、漁業や鉱物資源の開発など経済活動の権利を沿岸国が持っており、他国は無断で漁や資源開発ができません。EEZ内で沿岸国に認められる権利は領海内よりも範囲が狭く、船の航行や航空機の上空飛行、海底の電線・パイプラインの敷設は他国も自由にできます。
 なお、陸地のまわりに広がる深さ200メートルくらいまでの浅い海底を「大陸棚」といいます。沿岸国はEEZと同じ200カイリまでの海底と海底下を自国の大陸棚と決めることができ、海底の地形や地質が一定条件を満たせば、範囲を最大350カイリ(約648キロメートル)まで延ばせます。沿岸国には大陸棚を探査して天然資源を開発する権利があります。
 EEZや領海などに含まれず、どの国の権利も及ばない海域が「公海」です。公海上では各国は航行や漁業などが自由にできます。
2016年9月19日掲載