ビジュアル・ニュース解説

英国、EUを離脱へ~背景と今後の影響は?

2016.7.18 掲載
2016年6月、英国で行われた欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票で、支持が全体の過半数を占めて離脱が決まりました。EU加盟国の離脱は初めてで、統合と拡大を進めてきた欧州は大きな試練に直面しています。英国とEUの今後の関係は不透明で、国際金融や世界経済、企業の欧州での事業展開などに悪影響が及ぶ恐れがあります。今回は欧州統合のこれまでの歩みや、国民投票が実施された経緯、英のEU離脱による日本への影響などについて解説します。

1.1つの欧州を目指す壮大な試み(1)

1.1つの欧州を目指す壮大な試み(1)
 欧州各国はこれまで、貿易、人の行き来の自由化や通貨の統一などを通じて政治・経済的な連携を強め、欧州全体を1つの国のようにする統合に取り組んできました。
 欧州では2度の世界大戦で多くの犠牲者を出した反省から、段階的に統合が進みました。まず1950年代に資源やエネルギーの共同管理などを目的とした欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EURATOM)の3つの共同体が発足。これらが67年に統合して欧州共同体(EC)となり、92年に調印されたマーストリヒト条約に基づき、翌93年にはEUが誕生しました。
 99年には当時のEU加盟15カ国のうち、英国、ギリシャ、スウェーデン、デンマークを除く11カ国間の為替相場が固定され、金融取引に使う統一通貨として「ユーロ」が誕生。2002年にユーロ紙幣・硬貨の流通が始まりました。
 EUは経済的な結びつきを強めるだけでなく、外交・安全保障や司法、内政でも共通の行政・立法・司法機関を設けています。EUの最高協議機関は加盟国の首脳らで構成する「欧州理事会」で、政治指針や政策の優先順位を決めます。実際の意思決定を担うのは加盟国の閣僚らで構成する「EU閣僚理事会」です。このほか、閣僚理事会と共に立法を担当する「欧州議会」、政策立案・執行機関の「欧州委員会」、法体系を解釈する「EU司法裁判所」などがあります。欧州議会やEU閣僚理事会が認めた「EU法」は、共通ルールとして各国内法に優越して適用されます。
2016年7月18日掲載